3rdステージ 急展開
女神は何やら過去がある
―――なんだかんだあって私たちは魔王を倒したのでした。めでたしめでたし。
「魔王も倒してないしめでたくもないよ!」
なゆたんが急に前回までのナレーションっぽいことを言い出したけど、全てデタラメだからね。というか前回までのナレーションってなんだそれ。
「オラがやるポコ!」
―――早く名前をつけてほしいのであったポコ。
「それお前の気持ちなだけだよ!まあ合ってるといえば合ってるけど、まとめ方としては分からないよ」
なゆたんに続いてタヌキまで何を言ってるんだか。
「ではワタシがこの場をまとめましょう」
「さっき急にやってきたのにまとめられるわけないじゃないか!というか勝手に上がってきて、すんなり馴染んでいるけど何なの?!」
―――突然、女神のなゆたんがやってきて同居生活することに。タヌキを助けたら人間の姿になって名前をつけてくれと頼まれた。そこに新たに女神と名乗る女の子がやってきて、この先どうなることやら・・・
「合ってるよ!いきなりきて全てを理解しちゃってるよ!」
やっと話が通じる人が現れたよ。でもいきなりやってきて全てを知ってるなんて怪しすぎだろう。それに女神はもうなゆたんで間に合ってるんですけど。
「お久しぶりです。ななりー」
「なゆたん。元気そうだね」
「あれ?二人は知り合いなの?」
「そうです。ななりーは天界の学校で同級生だったんですよ」
「
「よろしくするポコ」
新しくやってきたななりーと名乗る女神は見るからにまともそうだ。委員長キャラからメガネを外したら、それがもうななりーの見た目だ。そんな容姿の通り自然と話を進め始めた。
「なゆたんとの思い出話に花を咲かせたいところですが、まずは頼まれているタヌキちゃんの名前をつけることにしませんか?」
「そうだポコ!はやくつけて欲しいポコ!」
「もう牛肉って名前で良いじゃないですか」
「いやそれ種類が違うから!いやいや前提条件として食用じゃないからね!」
そんなやりとりを見ていた委員長、ではなくて、ななりーがなゆたんに向かって話しかけた。
「豪牙先輩が名前をつけることをなゆたんが嫌がるのはわかるよ。でもそれくらいは我慢しても良いんじゃないかな」
「まあ、別に気にしませんけどね」
「名前をつけることに何か問題があるの?」
それを聞いたななりーが説明してくれた。タヌキは人間に変身できるほどの能力を既に持っているので、神の存在に近づいていること。神に名前をつける行為は、その神の存在を確定させる重要な意味があること。名付け親の考えや意思が神の今後に大なり小なり影響を与えること。他にも細かいことがあるようだけど、おおざっぱにまとめるとこういうことみたい。
「まあ何となく分かったんだけどさ。それで俺がタヌキの名前をつけることに何でなゆたんが嫌がるの?」
「あれ?豪牙先輩は知らないんですか?それはですね。なゆたんの名前をつけたのが・・・」
「うわー。言わないでください!」
なゆたんは慌ててななりーの口をおさえた。
「そんなことも言ってなかったんだ。じゃあ豪牙先輩の家にやってきた理由もまだつたえてないのかな?」
「そういう話はやめてください。いくらななりーとはいえ、これ以上口にしたら攻撃しますよ!」
「わかったから。もうこれ以上は言わないよ」
なゆたんの頭をななりーが撫でてなだめている。なゆたんはその間も『ぷんすこ』という擬音を周りに撒き散らしていて、まだおむずがりのようだ。
「それにしても、そんな重大なことを俺がやっても良いものなの?」
「オラの名前はゴーガにつけて欲しいポコ!」
「そうですね。おそらくタヌキちゃんは豪牙先輩に助けられたと思っているのでしょう。関わりがある人に名前をつけてもらった方が力が安定しますから」
「それなら私も助けましたし、豚肉で良いんじゃないでしょうか」
「助けられたことより捕食されそうな不安の方が強いから嫌ポコ!」
どうやら俺が決めなきゃいけないようだ。どうしたものか。
「うーん。名前をつけるって難しいぞ」
「何かイメージを膨らませると思い浮かびやすそうですよ」
「立派な名前をつけるポコ!」
「ポンポコポンポコうるさいですよ」
何か良い名前は無いものか。ハムスターが回し車をダッシュしているくらいいろいろと考えてみた。
「うむむむ。じゃあこういうのはどうだろう。お寺でポンポコしてるから『てらぽん』っていうのは」
「あはははは。豪牙さんのネーミングセンスは相変わらずですね」
「え?相変わらず?どういうこと?」
「あっ。何でもないです。気にしないでください」
なゆたんは何故かホホを赤く染めて下を向いている。酔っぱらってもそこまで赤くならないのに。なんだか今日のなゆたんの反応はいつもと違う。
「豪牙先輩はてらぽんと名付けましたが、タヌキちゃんはそれでよろしいのですか?」
「良いポコ。ゴーガが付けてくれた名前なら何でも大丈夫ポコ!」
「わかりました。それではせっかく女神のワタシが居ますので、ななりーの名において、てらぽんの名前が付けられたことをここに証明いたします」
すると、てらぽんの身体が金色に輝きだした。かと思ったら3秒くらいでその輝きは消えてしまった。
「なんだか元気が湧いてきたポコ」
「豪牙先輩に名前をつけられて、ほぼ神として定着したんですよ。おめでとうございます」
「俺が名前をつけただけなのに、なんだか変な感じだなあ」
「今から鶏肉に名前を変えても良いんですよ」
無事に名前をつけた俺たちは、唐揚げをつまみにビールを飲み始めた。さすがに神なだけあって、ななりーもてらぽんも美味しそうにゴクゴク飲んでいる。神は本当に酒が強いらしい。俺は宴会が続くように、簡単なつまみをいくつか作って再び飲みの輪に加わった。
「女神の二人は同級生のとき、どんなだったポコ?」
てらぽんが聞いたこの一言で、今までの日常が動き出すことになるのだった。
女神と一緒に暮らすのは楽じゃない あおっぽい @ao_poi
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