女神は1人とは限らない

「いやー。やっぱり唐揚げでしたね。唐揚げうまままま!ジューシーで本当に美味しいです。もう唐揚げに勝るものはありませんね。世の全ては唐揚げでできているといっても過言ではありませんよ。テラ唐揚げwwwマヂ唐揚げ最高www」

「前回とおんなじだな」

「前回とおんなじポコ」


 怪我をしたタヌキを助けたら、女人化して帰ってきた。部屋に上げて話を聞いてみたら、タヌキに名前を付けてほしいと頼まれたのが前回のお話。


豪牙ごうがさん。説明乙wwwwww」


 そう言ったなゆたんは、唐揚げをムシャムシャと食べつつビールをゴクゴクと飲んでいる。なゆたんからどうしても食べたいと頼まれたので、タヌキの名前を考える前に唐揚げを山ほど作ったんだけどね。漫画のようにテーブルの上にどーんと積み上がるくらい作ったのに、もう半分くらい食べられてしまったよ。


「いやー。やっぱり唐揚げとビールの相性は抜群ですね。うまうまごくごく」

「俺たちが食べる分も残しといてくれよ」

「大丈夫ですよ。山というのは下にいくほど広いですからね。高さ的に半分減ったように見えても実際は3分の1くらいしか減ってませんから。賢いですよね私って」


 言ってるそばからガツガツと食べ続けているなゆたんは、あまり賢そうではない。とりあえず唐揚げのことは良いから本題に戻そう。


「名前をつけて欲しいんだっけ?」

「そうモグモグ。名前をつけて欲しいんモグモグ」


 このタヌキも口癖が変わるほどに食べてやがる。

 このまま二人して食べ続けるのかと思ったら、急になゆたんが立ち上がった。


「あなたの名前は・・・そうですね・・・・・・肉!」

「なんだよ肉って。そんな名前で良いわけあるか!」


 急に変なことをおっしゃる。思わず突っ込んでしまった。


「仕方がないですね・・・・・・食材!」

「食べる気満々すぎるよ!」

「スパゲッティカルボナーラ!」

「何もタヌキと関係ないし!」


 こんなやり取りをタヌキは唐揚げを食べながら黙ってじっと見つめていたが、口の中のものをごっくんと飲み込んでからゆっくりとお願いした。


「男の人のほうに名前をつけてほしいポコ」

「私の考えた素晴らしい名前を断るんですか!」

「採用するほうがおかしいだろ。こんな名前しか考えないんじゃ俺を指名するのも分からなくはないけど」

「本当に豪牙さんが名前を考えるんですか?」


 なゆたんが少し微妙な表情でこっちを見つめている。俺のネーミングセンスを疑っているのだろうか。それとも、そんなにタヌキの名前をつけたかったのだろうか。いつも明るいくせに、ときどきこういう表情をされると何だか少し不安になる。


 ピンポーン。急に呼び鈴が鳴った。呼び鈴はいつでも急に鳴るものだけどね。


「あ、誰か来たみたいだね。ちょっと出てくるよ」


 その場の空気を変えるにはちょうど良かった。でも後になって考えると、なゆたんと俺との関係が劇的に変化したのは、この人がやってきたこの瞬間からだったんだ。


「こんにちは。女神です」


 え?また女神?

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