2ndステージ 日常

女神はまとめていても絡みたがる

 俺の名は沙極豪牙しゃごくごうが。平凡な人生を21年間過ごしてきた。しかしある日突然その生活が一変してしまった。なゆたんと名乗る女神がやってきて一緒に暮らし始めてしまったのだ。


 そんななゆたんとの共同生活も2週間が過ぎた。いろいろと大変な目に合わされてるが、これまでに味わったことのない楽しい日々を送っている。なゆたんが来るまでは、ただ毎日が過ぎ去るだけだったのに。


 一緒に暮らしてみていろいろと分かってきたことがある。


 まず人間界とは別に天界という場所があり、そこが神様の世界らしい。でも神様は人間界にもやってきていて、気がつかないうちに一緒に暮らしているのだそうだ。なゆたんもその中の1柱で、一人前の女神になるため、天界の学校を卒業したタイミングで俺の家に住み着いて人間世界を学ぶことになった。柱っていうのは神様を数える単位だよ。俺もなゆたんが来て初めて知ったけどね。


 そんななゆたんは相変わらずふざけていることが多い。初めて会ったときにネットスラングでしゃべりかけられたのはビックリしたが、天界にいるときに人間界のことをネットで学んでいた影響だったようだ。普通のしゃべり方も知ってるんだねと聞いてみたら、


「うはっwwwネット以外で使うと思ってるとかwwww自宅警備員乙wwwww」


 なんて言われてしまった。

 たしかに一緒に暮らしてみると、そういう言葉を使うときは本当にふざけているときだけで、それ以外は普通のしゃべりかたをしている。まあ普通のしゃべりかたでもおかしな行動しているけどね。


 なゆたんは良く食べて良く飲む。何でも食べるけど特にシソがお気に入りだ。シソの種とプランターを買って、楽しそうに育て始めた。食べるには3カ月くらいかかるみたいで、食卓に並ぶシソはまだお店で買ってるけどね。なゆたんは天界でもシソを育てていたらしい。よっぽどだな。

アルコールはビールばかり口にしている。なゆたんが天界から持ってきたビール樽からずっとビールが出ているから酒代がかからなくて済むのは本当にありがたい。


「豪牙さーん。暇です。私の出番はないんですかー」


 なゆたんがいきなり話しかけてきた。こういうまとめ回って大事だと思うんだけど。せっかく自分が大切なことをやっているのに邪魔をしてきた。しかもなゆたんはトルコアイスのようにみょーんと伸び縮みしながら壁や天井まで使って跳ねまわっている。


「いま忙しいからちょっと静かにしててくれる?」

「何を言ってるんですか豪牙さん。何もない場所に向かって一人でぶつくさ言ってることが忙しいんですか?」


 え?周りから見たらそう見えるの?

 頑張ってまとめてナレーションっぽいことやってるのに。頑張ってるよね俺。このままじゃ、ぶつくさ星人とか変なあだ名をつけられてしまうぞ。


「ねえねえ、変態エロ虫ぶつくさ残念人間さん」

「もうあだ名じゃないよね!おもいっきり悪口を言われてるよね!」

「相手をしてくれないなら、私の部屋で漫画を読んできます」


 なゆたんは自分の部屋に入っていった。そう、なゆたんには部屋があるんだ。俺が住んでるこの家には部屋が2つあって、1つは居間、もう1つはなゆたんの部屋にした。俺の部屋がないのは仕方がない。なゆたんも女の子だから自分の部屋が欲しいだろうし、寝るときもその方が安心だろう。俺は居間に布団を敷いて寝ている。2部屋のアパートだけど郊外にあるので、まあまあ安く住めている。


 なゆたんは食べて飲んでるだけじゃない。漫画やアニメが大好きだ。集中して読んでいるときは何故かなゆたんの姿が簡略化した漫画みたいになる。これも神通力なんだろうか。


 そう。神様は神通力を使うらしい。魔法みたいなものだ。漫画の背景に描かれている擬音を実際に出したり、空中でコップをくるくる回しているのも見た。役に立ちそうな神通力はまだお目にかかってない。その神通力のパワーの源がアルコールらしい。だからなゆたんは良くビールを飲んでいる。


 酔っぱらい始めるとかわいいんだ。いや普段からかわいらしい見た目だけどね。自分の好みにドストライクなんだ。

 ただ普段はおかしなことばっかりやってるからあまりそういう気持ちにはならないんだけど、酔っぱらい始めると普段よりおとなしくなるからね。そうすると非常に魅力が増してくるんだ。


 でも俺はやましいことはしないつもり。一人前の女神になろうと人間界にやってきたなゆたんを応援しているし邪魔をしたくない。

 食べたり飲んだり漫画を読んだりテレビを観たり遊びに行ったり。修行みたいな真面目なことは一切やってない。でもそれで良いと思い始めてる。この世界を知ることは大切だし、なによりなゆたんが楽しそうだから。俺はなゆたんに明るくて楽しい女神になってほ・・・・・・


「うぎゃー。目が。目がああああああああ」

「いい加減ぶつくさ言い過ぎですよ。さあ飲みはじめますよ!」


 なゆたんが持ってきたビール樽は泡をビームのように出して攻撃することもできてしまう。そして俺は忘れたころにそれをくらってしまうんだ。

 でもそれも悪くない。なゆたんが来てから毎日がにぎやかになった。楽しくなった。こんな日常も悪くないと思い始めてい・・・・・・


「目がああああああ」

「ほんともう早く飲みましょう。今日の議題は私のおっぱいについてです!」

「な・・・・・・なゆたんの・・・・・・おっぱい?!」

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