女神は突然ぶっこんできた
「
「ちょいちょいちょーい!なんでそんなこと知ってるの!」
「女神ですから。調べはついてます」
「いや女神うんぬんじゃなくて、完全に個人情報がどこかから漏れてるよね!」
いきなり変なことを言われて、全身の毛穴という毛穴から嫌な汗があふれ出した。毛穴じゃないけど目からも汗がちょっと出ているからね。
「その、仮に知ってたとしても、そういうことを言うのはちょっと・・・」
「豪牙さんが女神だと証明しろって言ったんですよ」
そうなのだ。いきなり家に押しかけてきた自称女神なんて素直に信じられるはずがない。だから何か女神だと信じられるものを見せて欲しかったのだけど、俺自身でも忘れていた悲しい過去を掘り起こされてしまった。
「えーと、豪牙さんは自分自身で非常に運が悪いと考えて生きているようですね」
「否定しない」
「でも、学生時代からの友人どころか知り合いもいないのは単にご自身の性格のせいですよ」
「3年くらい連絡を取ってないだけだから。友人がいないわけじゃないから!」
「高校を卒業して就職するも、その会社が半年で倒産。その後は2年半ほどフリーターとして生活しているが長続きするところがなく、いろいろな職場を転々としている。と」
「その通りです」
「そんな3年間の社会人生活のなかで友人と呼べるような人が1人もできなかったのは、やはり豪牙さんの性格に問題が・・・・・・」
「もうやめて」
なんてことだ。こんなに凹まされるとは。もう目から汗をドバドバ流しても良いよね?
「豪牙さんは運が悪い人ではないですよ。おそらくそれは・・・・・・おっと、これは言う必要がないですね」
「気になるじゃないか」
「言わない方がこれから面白くなりそうなので言いません」
「遊ばれてる?完全に遊ばれてるよね?」
でも凹んでばかりもいられない。ちゃんと聞かなければ。
「たしかに俺の過去について知ってるみたいだけど、それは女神だという証明にはならないんじゃないかな。何かわかりやすく女神だとわかるものとかないの?」
「それでは豪牙さんの性に関する趣味嗜好を赤裸々にお伝えしたほうがよろしいですか?」
「ごめんなさい。勘弁してください」
自称女神ことなゆたんは、わかりやすいくらい悪者の顔をしてクックックと笑った。しばらくして満足したのか、真面目な表情をして聞いてきた。
「いろいろと情報はありますが、まあ後は・・・・・・ご自身が幼かったころの出来事で何か思い出すことはありますか?」
「え?幼いころのこと?漠然と言われても特にこれってものは思い出さないなあ。というか幼いころのことなんてほとんど忘れちゃってるから、いきなり言われても何も出てこないよ」
「そうですか。それならば結構です」
彼女が真面目なのは一瞬だったようで、ニッコニコしながら顔をメトロノームのように左右に振って聞いてきた。
「女神でしたよね。マジ女神でしたよね?」
「いや。ただ嫌な個人情報を言われただけで、女神だなんて確信できないよ」
「絶対これ画面の向こうで涙目www顔真っ赤wwwwww」
「画面の向こうってなんだよ!目の前にいるだろ!」
「じゃあこんなのはどうですか?」
すると、なゆたんは輪になった糸を取り出した。
「はいタワーwww東京タワーwwwwww」
「あやとりなだけだろ!女神じゃなくても上手な人はいるわ!」
「まったくもう。これ天上界で取れた糸なんですよ。まあ地上でも同じものが取れるので違いは分からないでしょうけど」
「もう証明する気が無いじゃねーか」
「えー。面倒臭いですよー。良いじゃないですか女神ってことで」
そう言うと、なゆたんはつまらなそうに人差し指をくるくると回し始めた。その指の先にはひっくり返ったコップが指の動きに合わせてくるくると回っている。お茶がこぼれないままで。というか宙に浮いて。
「それだあああ!そういうの!!!」
「は?何がですか?」
「いや。おかしいから。コップが宙に浮いてるだけじゃなくて、逆さになって中身がこぼれてないのが!普通の人間にはそんなことできないから!」
「なんだ。こんなんで良かったんですか。最初からやれって言われればやりましたよ。早く言ってくださいよ」
「いやいやいや。そんなことできるなんて最初から分かるはずないから!」
何やらおかしなことが目の前で起こっている。もしかしたら本当にこの子は女神なのかもしれない。そう思い始めると、1つの疑問が浮かんできた。
「えーと、君・・・なゆたんは何で俺の家にやってきたのかな?」
「暮らしまーす!ここにお世話になりまーす!」
「はぁああああああああ?!!!」
いきなりとんでもないことをぶっこんできやがった。
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