第一章

それは平和な朝のこと

 突然だが、俺の名前は増田アヤヲ。高校二年生だ。最近は厄介な奴らに友人認定されて困っている。噂をすればなんとやら、早速来てしまったか。

「おーい!相棒!」

 こいつはリンド。身長2メートル以上、重さは1トンの同じクラスの女子高校生だ。何をどう食べたらこう大きくなるのかは分からないが、なってしまったものは仕方がない。地震が起きない事を祈る。先程からドスドスと、廊下を踏み抜かんばかりの地響きがするのは彼女が走っているからだ。ヒヤヒヤする。

「おはようざます。ところであいつはまだざますか?」

 まだだな。ところでリンドは学校が私服を許可している為毎日ドレスで通学して来る。今日もそうだ。それで廊下を走って転ばないのだから、すごいものだ。リンドが来ると廊下は逃げ惑う学生と交通整理をする教師で騒がしくなる。全く。

「おおーい、待たせたなメイト!」

 炎のようではないがツンツンとした赤い髪、全身白無垢のタキシードのこいつは火髪寝れんかはつぬれん、中二病患者だ。俺のことをやれ世界の悪から善良な市民を守る為暗躍する組織のメイトだとか、俺とリンドの仲人だ、散々言ってくるお調子者だ。朝からこいつら二人が揃うなんて最悪だ。今日は平和に生きることは無理そうだな。


「きりーつ、れーい、ちゃーくせーき」

 今日も退屈で、それでいて予測不可能な一日が始まる。唐突に自習になるかもしれな

「一限のアソパソマソ先生は遅刻のため自習です」

 考えたそばからこれだ。本当に大丈夫か、この学校。しかしアソパソマソの授業なら無い方がマシだ、悪くはない。

「んだよーまたアソ公の授業なしかよー」

 四人分のスペースを占領しつつリンドがでかい声を出す。アソパソマソの地獄の音楽教室を楽しみにできるのはお前だけだ。

「頼みますから、大人しく自習して下さい」

 そういって担任のピヨピヨは怯えながら去って行った。しかしすることが無い。何故なら、俺は妄想力者、妄想を具現化させる力を持っているからだ。テスト勉強をする必要もない、課題をやる必要もない。せっかく窓に面した席に座っているから、外でも眺めようか。

 急に外が暗くなった。ピヨピヨがいなくなった瞬間から騒いでいた奴らも、驚いて沈黙した。太陽が黒い何かに覆われている。これは、円盤だろうか?俺も含めて教室の皆が円盤を注視した。すると、そこから人が出てきた。まじか。人はなんか喋った。何言ってるか分からんが、窓を開けて聞くだけ聞いてやろうか。俺は窓を全開にした。

「ここに増田アヤヲはイルカ?」

 どよめき。そりゃそうだ、俺も内心驚いた。しかし雰囲気がただならぬ。このような場合は毅然としなきゃな。そこの奴、俺がそうだが、何か用か。

「そうか、お前がそうか。悪いが、地球の水もらってもいいか?」

 は?水ならこの地球にはかなりある、貰っても文句は言われねえだろ。

「悪いな。あばよ、この星の代表者さんよ」

 そいつは円盤に乗って去って行った。俺は意味が分からないまま席に戻る。教室はいつもの明るさを取り戻す。鳥は鳴き、さっき俺が開けた窓からは優しい風が吹いている。しかしこの教室の俺以外の生徒は違った。皆一様に口をぽかんと開け、今の顛末を見ていた。

「なんだったんだ?今の。」

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In the Dead of Night シーラカンス @Coelacanthidae_

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