第40話 ◆遭遇

◆遭遇


キャプテン、キャプテン。  起きてください!  たいへんデッス!


う・・うん  あかねか?  どうした?



RAG号の進路上に複数の船影を発見したんですけど、どうやらまた海賊さんがお出ましのようデッス。


ちくしょう せっかくいい夢を見てたところを起こしやがって!


俺はベッドからノロノロと起き上がり、スリッパを履いた。



あぁっ  いやーーーっ  桃島・・・ ふ、不潔デスよーー


なんだ、あかね?  お前うるせぇ・・・   おわっ!   なんで佐々木が俺のベッドにいるんだ?


はっ どうりで夢の中に、妙にプルプルするスライムが出て来たのか。



じゃなくて、コイツの事は後回しだ!


すぐに操舵室に行く。  取り合えず警戒レベル4体制を取れ!


ラジャー!



俺は、直ぐに防護服に着替えて、操舵室へ駆けこんだ。


その後の動きは?


少し進路を変えてみたんデスけど、やっぱり向こうもそれに合わせて軌道修正して来ます。


もう、ロックオン状態ってことか。  これでは奇襲作戦は使えないな。


商船一隻と複数の海賊船じゃ話にならなんし、大ピンチってことかよ。  くそっ!


あかね、この近くにナショナルスペースエージェンシーの船はいないか?


残念ながら、見当たらないデスね~。



そっか・・  あかね、お前ワープとかできねぇの?


キャプテン桃島、恐怖のあまり頭がおかしくなったデスか?


いやいや、よく聞けよ。  ワープとかだよ。  別にワープとは言ってないだろ?


この状況を打破できるような、何かいいアイデアがないのかよ!



そうデスね・・・  戦闘では100%勝てませんし、お客様も乗せてるので降伏以外は選択の余地がありませんネ。


そうだな・・・  考えられるとすると捕虜になって身代金交渉の材料になるか、あかねを捨てて小型艇で脱出するかだな。


クッハァーー  クゥーーー  あ、あかねは、やっぱり味方に見捨てられちゃうんですね。  あああぁ・・・  なんたる仕打ち!


なんだよ。  あかねは前にも捨てられて、スクラップ寸前だったじゃないか。


ううぅ・・  今度はなんだか急に悲しくなってきました。



もう手の打ちようがないか・・・  あかね、乗員全員に防護服を着用の上、操舵室に集合するようアナウンスを頼む。


ラジャーッス!


・・・


10分後、佐々木以外が操舵室に集まって来た。


佐々木のやつめ、まだ俺の部屋で寝てやがるのか。


ぶつぶつ呟いた俺の声に、近くにいた猿渡がニヤニヤしだした。


なんだ桃島、お前もう佐々木とそんな仲だったのか?



ち、ちげーよ。 あいつ夢遊病なんじゃねえの? いつの間にか俺の部屋で寝てたんだよ。


いや、別に今更隠さんでもいいよ。  みんな佐々木が桃島のこと好きなの知ってるし。 まったくモテる男は辛いね。


そ、そうなの?  なんでみんなが知ってるんだ?  もしかしたら、あかねのやつが?



お、遅れてすみません。  佐々木が操舵室に駆け込んで来た。



これで全員揃ったようなので、RAG号の現在の状況を説明する。


さきほど地球へ向かうRAG号の航路上に、複数の海賊船を発見した。


海賊船の出方次第だが、我々としては小型艇で脱出し火星へ向かうか、降伏して海賊の捕虜になるかの二択になると思う。


なんだって、桃島それは本当か?  犬居がこわばった顔をしている。


ああ、現状では戦っても勝てる見込みは0%だ。  近くにナショナルスペースエージェンシーの船も居ない。


おそらくだが、もう直ぐ先方から何か言ってくると思うので、その内容を見てから対応するが、念のため防護服を着用して各自の部屋で待機していて欲しい。


動きがあったら、船内放送で状況は伝える。  


なお各スペースを結ぶ防護隔壁は、現段階で全てロックするので、どうしても解除したい場合は、あかねに申請してくれ。


以上だ。



こうして、RAG号の船内には緊張と不安が広がっていったので、次回へ続く・・・

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