第36話 ◆不審な動き

◆不審な動き


夕食前にクルーとお客様の自己紹介をそれぞれ簡単に済ませ、夕食を兼ねた立食パーティが始まった。


みんなが好き勝手に行動しやしないかとヒヤヒヤしたが、結構大人に振舞っていて心配していた自分が少し恥ずかしくなった。



なんとパーティの途中でサプライズがあった。 歌手のリーシャがロシアの歌を披露してくれたのだ。


その透き通る美しい歌声にみんながしばし聞き惚れた。


そんな中、雉田が感激のあまり号泣してリーシャがドン引きしているのが、俺的には可笑しかった。



はーい、みなさん。  そろそろお開きの時間デース。  


今日はこの後、燃料を満タンまで注入するので、浴場とシャワールームは24:00までしか使えません。 くれぐれもご注意ください。


もう少し飲みたい方は、26:00まではラウンジでお楽しみいただけます。



あかねも、今日は普通にしゃべってるじゃないか。  いつもこうならいいのにな。


俺も、今日は飲み過ぎたので、軽くシャワーを浴びて早く休もう。



ロシア人は流石に普段ウォッカをグイグイ飲んでいるのでお酒に強い。


それに付き合って飲んでいた猿渡や犬居は早々に酔いつぶれて目論見も達成できず、ざまを見ろである。



あかね。 それじゃすまんが後はよろしく頼む。


は~いデッス。 


・・・



そしてみんなが寝静まったころ、一人の怪しい影が第一倉庫内をウロついていた。


RAG号の、あかねが自慢していた24時間安心セキュリティは、実はたいした事はなく不審者は赤外線探知システムを簡単に回避していた。


そして大きな積荷のカバーを外しながら、中の機械を調べ始めた。


カバーが外された高さが13mもあった積荷は、軍事用大型ロボットのようだ。


そして不審者は機械やロボットを高感度赤外線カメラで次々に撮影していった。


撮影が一通り終わったころ、もうひとりの人物が第一倉庫に現れた。  そして、二人が協力しながら元通りにカバーを掛け直していった。


その手際の良さから、相当手慣れている者たちであることが分かる。


これが、その日深夜の出来事であった。



・・・


翌日、火星は大荒れだった。 二酸化炭素がいたるところで噴出し砂を巻き上げていたのだ。


キャプテン桃島、この状況で離陸するのは少々リスクがありますが、出発を延期しますデスか?


今後、天候が回復する見込みは?


吹き出すガスの速度が、時速150kmを超えています。 それも、徐々に広がってきていますデスよ。


つまり、回復の見込みは無いってことか・・・


そデッス。


よしっ!  直ぐに出発しよう!  艦内にアナウンスをしてくれ!


ラジャーデッス!


こうしてRAG号は、不審な二人を乗せたまま地球へ向けて飛び立ったのだった。



次回へ続く・・・

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