第35話 ◆一番人気

◆一番人気


おーーい 桃島ーーー。


なんだ猿渡、珍しいな。  10日ぶりくらいじゃないか?


おう。 桃島、ちょっとロシア人のお姉さんたちの情報を教えてくれや。


久々に会って最初の発言がそれかよ!


いやー みんな美人でおまけにプリっぷりじゃねぇか。


早く仲良くなれば、帰りの1年なんてあっと言う間に過ぎそうで嬉しいよ。


(ハハッ 中に怖いヤツもいるけどな)


後でみんなにも紹介するけど、政府の要人とか科学者なんかも居るから、くれぐれも軽率な真似をするなよ!


なんだ、そうなのか?


おっ、分かり易くガッカリするなぁ。 でも、歌手とかもいるんだぜ。


やった、俺それでいいや。


ばかやろ。 向こうが嫌がるわ!


・・・



桃島せんぱーい。


なんだ雉田?


実は、先輩にお願いがあるんッスけど。


なんだお前もロシア人か?


なんで分かるんッスか?


1年間も宇宙船に閉じ込められた男が考えることなんて、だいたい一つだろーが。


それなら話が早いッス。  あの、フィギュアみたいな女の子が一人いるじゃないですか。


あーー 歌手のリーシャって娘かな?


あの娘歌手なんですか?   


らしいよ。


あの娘、自分に紹介してくれませんか?


いや、全員紹介するよ。  何しろこれから1年間一緒の船に乗るんだから。


やった、リーシャと絶対に仲良くなります。


(向こうが嫌がりそうだけどな)


・・・



桃島ーーっ。


あぁっ?  猿かよお前ら!


おいおい、俺の事わすれたのか?  俺は犬居だぞ!


そんなことは分かってるよ!  どうせお前もロシア人のこと聞きたいんだろ?


おぅ、それなら話が早いな。  若くてかわいい娘が一人いるだろ?  すまんが、あの娘、紹介してくれよ。


お前もかよ!  夕飯前に全員紹介する予定だから、それまでおとなしくしてろや!


なんだ、やけに機嫌が悪いな。


あたりまえだ。 お前も一度キャプテンやってみろ!


いやーー すまんな。  俺はリーダーとか向いてないんだ。  それじゃ夕食まで待ってるわ。



それにしても、みんなリーシャ狙いなのか。 面倒なことにならなきゃいいけどなー。


・・・



桃島さーん。


なんだ佐々木か。 どうした?


あの~ あかねさんから聞いたんですけど。 お客さんの中にサイボーグの人がいるんですか?


あれ?  なんであかねがそのこと知ってるんだ?



はい、は~い。  それは、あかねが直接お答えしますデスよ~。


わかった。 わかったから俺に言わせろ。


第一倉庫で荷物を積んでた時にモニタリングしてたんだろ? 


パンパカパーン  ご名答デッス!  


あまえは、まったく油断も隙もないな。  


あーーーっ  そういうこと言っちゃいます?


だってそれって盗聴と変わらんだろ。  スパイでも目指してるのかよ!


いえいえ、あかねは、みなさんのセキュリティと安心を24時間お守りしてるんデスよ。


守秘義務はどうした?


そのことならアセーリャさんが自らお話しになられたので、問題ありませんよ。


特に内緒にしろともおっしゃってなかったし。



あの~ それでどの人がサイボーグなんですか?


ああ、通訳とSPをやってるラードゥシュカさんって人だ。


あたしとおなじサイボーグの人って初めて会うんです。  桃島さん、その方ぜひ紹介してもらえませんか?


今日何回目かわすれたけど、夕飯前に全員紹介する予定だから楽しみにしてろ。


はい♪



・・・



キャプテン、ちょっといいですか?


なんだ、おまえもかよ。 一条はなんの用だ?


えーーとですね。  もしかして、お客様の中に有名な物理学者の方っていますか?


ああ、いるぞ。 イラルシュカさんて人だ。


やっぱり。 超ラッキーです。  あたし、その人の本の大ファンなんです。


今回の旅行でもイラルシュカさんの本は2冊持って来てるんですよ。


サインをもらいたいんで、ぜひ紹介してください。  


おい、一条。  お前、今旅行って言っただろ!  勘違いするなよ。 俺たちは仕事で来てるんだからな!


あっ、いけない。 そうでした。  あまりやる事が無くて、つい間違えちゃいました。



こうして、俺以外は何のために乗船しているのか分からないようなクルーたちにとって、ロシア人のお客たちは格好の清涼剤になったようだった。



桃島が一人だけ忙しいのを拗ねたようなので、次回へ続く・・・

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