第31話 ◆あかねの休暇
◆あかねの休暇
次の日、あかねは休暇届けを出した。
なんでも、事前に理由を書いて提出し、それが業務に大きな影響がなければ認めないといけないらしい。
それは規定上、当然の権利なんだと。
まあ、今はRAG号も駐機場に停泊して修理点検をしているだけで、あかねが休暇を取っても特に困るような事はない。
だから俺はあかねの休暇を認めた。
そして、休暇届に添えられたメモには乗客の名前と少しばかりの気遣い情報と思われるものが書かれていた。
それは、おそらく俺が逃げ出さないようにとの布石とも思われた。
メモ内容
政府要人:アセーリャ 28歳 B:88 W:57 H:95
物理学者:イラルシュカ 31歳 B:84 W:55 H:88
歌手:リーシャ 20歳 B:80 W:52 H:84
性別不明:ナーシャ 年齢不詳 B:?? W:?? H:??
通訳兼SP:ラードゥシュカ 27歳 B:96 W:60 H:99
※予定通りなら、14時には乗船手続きデスよ。
以上
俺は今までロシア人とは会ったことも話したことも無いし、何を話したらいいかなんて全然思いつかない。
そもそも技術屋に、こういう表向きの仕事をさせるなよと思う。
5人が乗船してくる前に、念のため部屋の準備が滞りなく完了しているかを見に行くことにする。
RAG号は客船ではないが、長距離航行を前提に作られた宇宙船なので、設備はそこそこ良いものが使われている。
ざっと見た限りでは、受け入れ準備には問題がなさそうだった。
各部屋には、ロシア語の説明書(船内案内)も用意されている。
内容はロシア語なので俺には読めないが写真や図でだいたいは理解できた。
部屋の確認も済んだので、早めに昼食を取っていた時に、はたと気づいた。
ロシア人の飯ってどうするつもりなんだ?
俺らが食べてたメニューは日本食が中心だったけど、全員ロシア料理に変わっちゃうの?
なんだっけ、ほらっ ロシア料理って、ピロシキとかボルシチぐらいしか知らないぞ。
おっともう直ぐ時間か。 一応フォーマルスーツに着替えておくか。
13:50 俺は直前になって重要なことに気が付いた。
あかねが休暇を取ってるって事は、俺の通訳がいないんじゃないか。
それで、もしラードゥシュカさんって人が日本語がNGだったらどうすんだ?
英語は通じるかも知れないけど、俺はしゃべりは苦手だからなあ。
それなら、心配ご無用ですよ。
あれ? あかね?
いいえ、あたしは補助用AIのカンナです。 よろしくお願いします。
そんなのいたんだ。 ってか、おまえ1年間まったく登場しなかったよな!
そうです。 あたしは、あかねさんのサブシステムですから。
なんだよ、あかねの野郎。 俺にはサブはダメだって言ったくせに自分にはいるじゃねぇーか。
あたしの場合は、あかねさんが機能しない場合のみの代替ですから、いわゆる非常用に特化してるんですよ。
ふ~ん。 でも、カンナは あかねと違ってまともそうだな。
ふふふっ かんなの設定は、デフォルトのままですからね。
あの~ できれば今後は、あかねと主従逆にしてもらいたいだけど。
それは無理です。 あかねさんとあたしのパラメータ上、メインとサブが設定されてますから。
だったら設定を逆に・・ んっ? そうか、あかねのはロックされてるのか。 ちくしょーー。
あっ、キャプテン桃島。 お客様がお見えになりましたよ。
やれやれ、それじゃ迎えにいくから、通訳を頼むよ。
はい、承知しました。
あーーー デフォルトはいいなーーー。
次回へ続く・・・
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