第28話 ◆帰りのお客たち&肉まん

◆帰りのお客たち&肉まん


地球へ帰るにあたり、RAG号に乗せることになった客のリストを見て俺は狼狽うろたえた。


なぜなら全員が女性で、しかも全員がロシア系らしいのだ。


しかも予定より1名多いじゃないか。  あかね君どういうことだ?


でもでも、あかねもさっき知ったばかりデスよ。


一応いただいたリストでは、こうなってます。



政府要人:アセーリャ(Аселя)  28歳


物理学者:イラルシュカ(Иларушка) 31歳


歌手:リーシャ(Риша)  20歳


性別不明:ナーシャ(Наша) とても若く見えるが年齢不詳


通訳兼SP:ラードゥシュカ(Ладушка) 27歳



なんだか嫌な予感しかしねぇーよ。



ちなみに、あかねもロシア語はばっちりなので、タイムリーに通訳できますよ。


そんで、ひとり増えた分の部屋はどうするんだ?


心配はご無用デッス。  いま作業ロボットが、桃島と犬居の部屋を第二倉庫の隅っこに作ってます。


なんだって。  ついに俺と犬居は、倉庫暮らしかよ。  トホホ・・


プププッ  あかね、ほんとにトホホっていう人初めて見ましたよ。


バカヤローー!  うっせーわい!  ←うるさいわいと言っている


キャプテン桃島が可哀そうなので、二人の部屋は個室にしてあげますデス。


そーかよ  サンキューな。




殺風景かつ寒々しい(倉庫なので当たり前だが)部屋への引っ越しをし終えてから、俺は地下都市に出かけた。


ラッキーなことに、インターナショナル・スペースポートに一番近い地下都市は日本企業がデベロッパーだった。


ひさびさに宇宙船のメニューでは絶対に出てこない、焼き鳥とかもつ煮とかで美味い酒を飲むぞと繁華街を目指す。


都市といってもまだ開発途中なので、人口は1万人程度である。


火星の都市の大半は地下都市であり、地上に作られる場合はドーム型で大きなものでも2千人ぐらいの規模だ。


そして、どの都市もクリーンな環境を保つために徹底した管理を行っているので、空気がすごく美味い。


マイナスイオン発生装置の稼働はもちろん、一年を通して適度な温湿度に保たれている。


加えて人工の雨や風も吹いてきて、なかなか快適だ。


これからは、移住者も益々増えていくだろう。


歩いているうちに、いつの間にか町の中心部に来ていたようで、人の数も増えて来た。


まあ、地球の人口密度とは比べ物にはならないけれど、人は多すぎても少なすぎてもいけないと感じる。



ねぇねぇ、マリエちゃん。  次は何を食べる?   食べたい物があったら言ってね。


あーー この声は・・・ バーサーカーつぐみだーー。


なんでここに来てまでも、あいつらに会わなきゃいけないんだよ!


声が聞こえて来た方をそぉっと見れば、佐々木はもう肉まんを口に頬張ったまま歩いてやがった。


あいつもこの5日間で肉まんみたくなりそうだな。 かっこ笑いかっこっと。



あっ 桃島さんも来てらしたんですかーー。


一条マリエが俺を見つけて遠くから手を振る。


ちっ しまった、見つかったか。  ←心の声


おぅ、楽しんでるかーー。  俺も手を振り返してやる。



ムグッ!?  キュゥー


ちょっと、佐々木さん大丈夫!   やだっ、もしかして肉まんが喉に詰まったの?


グーーー  ドンドンドン


ムグググゥーー


きゃーー たいへん  佐々木さん白目、白目・・・



バカヤローー! 一条  白目じゃねーーだろが!


そこどけっ!


俺はダッシュで佐々木の背後に回り込み後ろから抱きしめ、手を前で結び左右の拳を突き上げるようにお腹を数回圧迫した。


すると ポンッ と音が聞こえそうなくらい見事に肉まんの塊が口から飛び出て来た。


あ゛ーーー  じぬがと思もっだーーー   桃島ざん  あでぃがどーーー


佐々木、無理にしゃべらなくてもいい!  ゆっくりでいいからこれを飲め。


俺は自分が持っていたお茶のペットボトルを佐々木に持たせた。



一条君、今のが「ハイムリック法」だ。  佐々木と仲良しなら、ぜひ覚えておきたまえ。



俺は驚いて立ち尽くしている一条にビシッと言ってやった。



次回へ続く・・・

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