第27話 ◆火星到着なのに?
◆火星到着なのに?
片道約1年の長旅が、もう直ぐ終わろうとしていた。
目の前に手を伸ばせば届くように、赤い星が大きく見えている。
さすがに、シスコン佐々木兄も火星まではついて来れず、つぐみがぶっ壊した海賊船の後始末を行ったのち、本来のパトロール任務へと戻っていった。
スペースデブリを放置しておくと、他の航行する宇宙船に甚大な被害を与えてしまうので、その座標や移動方向や速度をスペースマップに記すとともに、警告用発信機を設置するのだ。
海賊船は、たった1隻の商船に8隻も大破させられ、しかもそのうちの1隻は、ひとりの女に素手で破壊されたのが効いたのか、二度と襲撃してこなかった。
そして、つぐみの暴走は海賊たちのネットワークで拡散され、係わってはいけない人物としてブラックリストのTOPに掲載されていた。
クルーのみなさん、長い間お疲れ様でした。 本船はあと3時間あまりで、火星のインターナショナル・スペースポートに到着しますデス。
手荷物をまとめたら、クルー専用のタラップ前に置いてくださいねデス。
なお、あかねは荷下ろしを行ってから修理用ドッグで破損部分の本格修理とメンテナンスを受ける予定デス。
地球へ向けての出発は、5日後の予定となっていますので、忘れないようにお願いしますデス!
なんだって? 5日後にもう出発するのかよ!
どうせ、帰るだけなんだから、もっとゆっくりさせろよ。
そうよ。 火星には美味しいものがたくさんあるって聞いてるのに、5日じゃあまり食べれないじゃない。
俺も火星のお姉さんと仲良くなりたいぞ。
僕も火星限定販売のフィギュアを見て回りたいです。
みなさん、修学旅行に来たんじゃなくて、仕事で来ているのを忘れないでくださいデス!
まったく、これだから人間はダメダメなんデスよ。
なんと言われも出発の日にちは変更できませんよ。 屑山課長からのご指示デスから。
ちっ、屑山の野郎。
まっ、地球に帰ったら一生遊んで暮らせるだけの報酬が約束されているんだから、おまえたちも我慢しろよ。
NO、NO 桃島さん。 まだ報酬は確定していませんよ!
おい、あかね。 それはいったいどういうことだ?
帰りは火星からの荷物と地球まで行くお客様をお乗せしなければならないのデス。
なんだって。 そんなの聞いてないぞ!
チッ チッ チッ デスよ。
桃島さん。 屑山課長から資料をもらってますよね?
ああ、もらったけど?
それに帰路のお仕事の内容も書いてありますよデス。
・・・ しまった、全部読んでねぇ。
そ、それなら仕方がないかなぁ・・・ アハッ アハハハハ・・・ ハァ~
念のために伝えておきますけど、ここで抜けた人には報酬は支払わないそうデス!
ブラックじゃん。 ちょー ブラックじゃん。 俺たちの会社ーーーー!!
もう諦めろ。 お前たちせめて5日間、火星を存分に楽しんでこいやーーーーー!
お・・おぅ・・・
ねぇねぇ、一条さん。 予定がないならあたしと美味しいものを食べに行きましょうよ。
いいですけど、あたしもちょっと行きたいところがあるので、1日は別行動でどうでしょう?
いいですよ。 でも、一条さんが行きたいところって?
ああ、火星でしか売ってないマニアックな工具があるんですよ。
佐々木さんは、工具なんて興味ないですよね。
え、ええ まぁ・・
お前たちはどうするんだ?
俺は、ナンパしに行くわ。
猿渡君らしいな。
先輩はどうするんですか?
俺か? 俺はうまい酒でも飲みに行くよ。
そうっすか。 僕はやっぱり、火星でしか売ってない限定フィギュアを買いに行きます。
あとは、伝説の原型師がフィギュア原型師の養成専門学校をやってるんで、そこを見学しに行きます。
こんなところに専門学校なんかあるのか?
それが、ここに来てまで原型師を目指す人が集まると言うんで、もの凄くハイレベルなんですよ。
そうか。 まぁ、頑張ってこいや!
あかね、俺も飲みに行ってくるんで、あとはよろしく頼むわ。
あっ、キャプテン桃島、ちょっと待ってください。
あ゛っ?
帰路に乗せるお客さんなんですけど・・・
ああ、そうだったな。 どうせこんなボロ船に乗るなんて変わったやつなんだろ?
実はデスね・・・ 連邦政府のお偉いさんとか、科学者とか、有名な歌手さんとか、性別不明の方とか、確かに変わった人たちデス。
うわ~ なんだそれ。 お前はただの商船だよな。 そいつらはなんで、地球行の客船に乗らないんだ?
それデスよ! 理由は二つあるんですが知りたいデスか?
別に。
ウッハァーーー クゥーーー やっぱり桃島さんの攻めはたまらないデスねーーー
別に攻めてなんかいねーよ。 興味がないだけだ。 理由を知ったって、知らなくったってどうせ乗るんだろ。
ま・・まぁ そうなんデスけどね。
ふんっ まっ、話したければ話せよ。
なんか、気分がよくありませんねー。 けど一応聞いてください。
ひとつは、2か月前に火星で起きたテロで、駐機していた宇宙船が沢山壊されたんだそうデス。
なるほど・・ 宇宙船が・・・ 無いんだ。
そデス。 そのとおりデス。
で、もう一つは、佐々木さんデス!
つぐみが?
そデス。 なぜだか分わかりますか?
いや・・だいたいは想像つくけどな。
それじゃ、せ~ので言ってみましょう。
せ~のっ!
佐々木が用心棒になるから!!
あったり~デス!
なんだかな~
で、船室は足りるのか? お前ポンコツ商船だよな。
相変わらず攻めてきますね~ あかね、嬉しくなっちゃいますよ~。
船室は、はっきり言って足りませんデス。
なので、佐々木さんと一条さんは一部屋に。 同じように、猿渡さんと雉田さん。 桃島さんは犬居さんと相部屋になります。
あ~ そうですか・・・ また、みんなストレスでおかしくなるんですね~。
しかたがないじゃないですか。 あかねの所為じゃありませんよーー!
仕方がないので、次回へ続く・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます