第25話 ◆サイボーグつぐみの大暴走  その2

◆サイボーグつぐみの大暴走  その2



ゆるせない!  ゆるせない!  ぶっ潰してやる!


つぐみはもう怒りで我を忘れていた。


なぜならば、命の次に大切なお菓子を倉庫ごと吹き飛ばされたからだ。


任務の後半に食べようと楽しみに残しておいた高級菓子が、目の前で宇宙空間に吸い出されて行くのをただ見ていることしかできなかった自分が悔しい。


そのあまりの怒りのため、つぐみの人工的に作られた左目の色は、真っ赤になっている。


こうなったら、大切なお菓子を宇宙空間に葬った、あの憎っくき海賊船を粉々に破壊してやらなければ気が済まない!


つぐみは、第三倉庫の直ぐ上にある小型艇の格納庫へ一気に駆けあがった。


その両足はサイボーグ化された性能を100%を出し切っていたのだろう、つぐみの後を追ってきた一条の目には最早もはや捉えられないほどのスピードだった。



格納庫に着くと、つぐみは自身の怒りの目と同じ真紅に塗られた小型艇に乗り込み、まっしぐらに海賊船の一隻へと向かった。



小型艇は脱出専用のため、武器の装備は無い。  どうやらつぐみは、敵の船に乗り込んで暴れるつもりらしい。


宇宙服の下には、つぐみ用に開発された新素材繊維で出来たボディースーツを着て、両腕・両足には特殊鋼で出来たプロテクター、拳には同じく特殊鋼のメリケンサックがはめられている。


後に桃島を震え上がらせるサイボーグつぐみの戦闘姿である。


・・・


海賊船は自分に向かって真っすぐに突っ込んで来る小型艇目掛けて一斉射撃を仕掛けてくるが、もともと対艦用の砲なのでなかなか命中しない。


しかも小型艇に、これだけ接近されてしまっては、もはやお手上げ状態であった。



つぐみは、海賊船の周りをグルグル回りながら、侵入できる場所を探した。


そして、格納庫であろう部分に修理の際に利用する小さな出入口を発見する。



つぐみはオートパイロットに海賊船に接近し並行して飛ぶように指示をだし、コックピットを覆っていたウィンドスクリーンを後方へスライドさせた。


海賊船と小型艇の間がじわじわ狭まりおよそ50cmになった時、つぐみはコックピットから体を思いっ切り乗り出して、右腕で海賊船の出入口ハッチを掴んだ。


次の瞬間、小型艇から海賊船へと右腕の力だけで乗り移り、続いてハッチをこじ開けた。


その途端、船内から爆発的にエアが噴き出し、つぐみはハッチ毎吹き飛ばされそうになるが、サイボーグ化された右腕を使いなんとか船内への侵入に成功した。


海賊船内には、ロボットがたくさん稼働していたが、戦闘用はその内のごくわずかであり、つむぎに次々とスクラップにされていった。



ドガッ


バリバリッ



一条マリエと桃島が調整した つぐみの体は絶好調で、ついに敵艦の操舵室のドアを蹴り破った。


よくもあたしの大切なお菓子を台無しにしてくれたわね!  覚悟しなさいっ!


な、なんだこの女!


目障りだ、殺っちまえ!


ぐわっ


ぎゃっ


あがっ!


つぐみの前では、人間など虫けらのようなものだった。


まさに瞬殺である。


見事なまでに、たった一人で海賊船一隻を制圧してしまった。



あれっ?  あたし・・・  ここって?


暴走が止まって、ふと正気に戻る。


えっ?   なに?  どうしてあたし こんなところにいるの?



のちに桃島が、つぐみの目に見えない頭のネジを弄ったせいで、つぐみが大暴走したと言われた事案であった。


ちなみに、残りの2隻の海賊船は、佐々木兄が乗るウラヌス号が撃破し、つぐみも小型艇に乗ってなんとか無事にRAG号へ帰還したのだった。



このへんで次回へ続く・・・

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