第22話 ◆おやつが大事

◆おやつが大事


時刻は5分前に遡る。


戦艦ウラヌスがRAG号に接近してくる中、威嚇射撃を受けて何事かとクルーたちが操舵席へと集まって来ていた。


俺は不安を与えないよう全員に、いま起きていることを簡単に説明した。


・・という事で、これからナショナルスペースエージェンシーのウラヌスの艦長が本船に乗り込んで来る。


応対は俺がするが、みんなもヒアリングされる可能性はあるので、くれぐれも余計なことを話さないように注意してくれ。



桃島さん、余計なことって例えばどんなことですか?


あのな佐々木君、いちいち例をあげて説明が必要なのか?  君だってもういい大人だろ。


だって、新入社員のうちは先輩に何でも聞いて行動するようにって言われましたよ。



はぁ~  例えば佐々木の例の秘密とか自分用の菓子を1tも積み込んだとか、いろいろあるだろ?


はっ?  そんなこと聞かれたって言うはずないじゃないですか。


佐々木は顔を真っ赤にしてプンスカ怒り始めたが無視である。 だから俺は冗談が通じない奴は好かんのだ。



キャプテン、戦艦ウラヌス号の艦長ほか3名が乗船して来ましたデス。


おう、あかね、それじゃ操舵室へ案内してくれ。


はい、は~い。



ガコッ


操舵室の出入口のハッチが開き、背が高いイケメンの男と下士官とみられる3名が入って来た。



どうも、RAG号キャプテンの桃島です。


わたしは、戦艦ウラヌスの艦長の佐々木です。



お・・お兄ちゃん・・・ こんなところで、いったい何しているの?


ですよね~  まさかの宇宙空間で佐々木が二人ですもんねーー。  俺は艦長の名前を聞いた途端、この展開がすぐさま頭をよぎったし!



おぉ、つむぎか。 ここにいたのなら話が早い。  さあ、お兄ちゃんと一緒に帰るぞ!


な、何を言ってるのよ。  あたしは火星に資材を届ける途中なのよ。 突然帰るなんて無理に決まってるじゃない!



おおっ  仕事熱心だな。  短期間でここまで成長するとは、俺の教育の賜物に違いない。



おやじとお袋が心配しているんだ。  とにかく、このオンボロ船から最新鋭艦のウラヌスへ乗り換えなさい。


いやよ!  だって、この船にあたしのおやつが後1年半分積んであるんだもの!


そっちかよ!  俺は心の中でひとり突っ込む。


あの、お兄さん。 


わたしは貴様の兄ではない!  それとも何か?  君はつむぎの婚約者とかなのか?


め、めっそうも無い。  佐々木さんとは同じ会社ってだけですよ。


今回の仕事で初めて仕事を一緒にすることになったんです。


じゃなくて、佐々木艦長殿。 確か本船が遭遇した海賊船についてお話しがあるのでは?


ああ、あれはつむぎに会うための口実だ。


くそっ、兄妹そろって常識がないやつらだな。 ←心の声


艦長殿、我々は社の業務命令で火星に向かっております。  つまり、就業中なので勝手に業務を放棄されては困るのです。


問題があるなら、ナショナルスペースエージェンシーの長官である父の許可を貰うが、それで良いだろうか?


あーー そうですか。  それなら、ぜひお持ち帰りください。  その方がこちらとしても被害が少なくてすみますから。


桃島さん、ひどい!   あたしあんなところまで見せたのに!


なっ! なななななな、なにを言ってるんだ佐々木ーーー!  あらぬ誤解を受けるだろうがーーーー!


やっぱりそういう事か。  桃島、おまえってやつは・・・


違うんだ、猿渡。  これは誤解だ!


ならば、佐々木と一条に聞く。  お前たち、昨日医務室でオセロ大会をやってたって本当か?


なんですか? オセロ大会なんてしてませんけど。  ねえ、一条さん。


それだ、それだよ。  余計な事っていうのはよ!  ←心の声


まあ、桃島さんとあたしは、つむぎちゃんに挟まってくるくるしてましたけどね。


い・ち・じょ・う  おまえーーーっ!  お前まで誤解を招くようなことを言うなよ!


キャプテン桃島、貴様の仕事はこれが最後だな。  おそらく会社は首になるだろうから次は無い。


さあ、つむぎ行くぞ!


ちょっとお兄ちゃん、あたし嫌だって言ってるでしょ!  もう、さっさと自分の船に帰って。


帰らないなら、もうあたしお兄ちゃんとは金輪際口をきかないから!


つむぎ・・・  わかった、今日のところはおとなしく引き上げる。


こいつシスコンか。  この妹にしてこの兄って・・・ どっちも世間知らずの良いとこ育ちってことか・・・


あかね、艦長が帰ったら塩撒いとけ!


了解デ~ス。



次回へ続く・・・

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