第11話 ◆リフトオフ
◆リフトオフ
各自、所定ポジションについて待機せよ!
あかね、カウントダウン開始!
はい、は~い♪ それじゃあ、いっくよ~♪
さん、にぃ、いっち リフトオフッ!
あっ、おいっ! なんで、スリーカウント?
ゴオォォーーー
RAG号は、大気圏内は機体に格納されている四つの大きなプロペラで飛ぶ。
従って、ロケットのような強烈なGに耐える必要はない。
大まかなイメージとしては、大きなドローンを思い浮かべてもらえればいい。
大気が薄くなってくるとプロペラを格納し、ロケットエンジンで上昇を続けるのだ。
RAG号は、ほどなく成層圏を抜けて、漆黒の宇宙空間に出た。
俺は中学2年の時、修学旅行で月に行ったことがあるので、宇宙空間から青い地球を見るのは2度目になる。
この感動は、実際に見た者でなければ絶対に分からないと思う。
あれから約10年、現在は地球の環境汚染や人口増加問題に対応するため、火星のテラフォーミングが進められている。
そして、俺たちのRAG号もそのための資材や機械などを運んでいるのだが、火星は開拓した者勝ちの無法地帯と化していて、海賊どもも火星を根城に暗躍しているのだ。
火星の開拓は、大企業や大富豪など莫大な資金を持つものが利権を自分たちの手にしようと戦国乱世のような状態だ。
当初は国家単位で開拓を進めようとする動きもあったのだが、どの国も財政が悪化しており、それどころではなかったのだ。
・・・
キャプテン、あと5秒ほどで地球の引力圏を完全に抜けますデス。
あ~ わーあった。 ←あ~ わかった。 と言っている。
あ、それから、あかね。 報告は、非常事態が迫ってる場合とかだけでいいからな。
んーーーっ それって放置プレーですよね? くぅーーー 久しぶりにキターーーーデス。
おまえ、変態かよ。
へんたいっ あ゛ーー 懐かしい響きデスネ。
でもこれは、前のキャプテンの設定デスよ。
へぇ~ つまり、以前は変態同士で飛んでたのか。
いやいや 流石にあかねだって、放置プレーを命令した変態さんには言われたくないデス。
あかね。 黙ってろ!
ああっ 言葉責め・・・
ちっ!
そういえば、食事は朝昼晩、時間通りに作っておいてくれ。
・・・
・・・
・・・
また、拗ねたのか。 ふん、初期型オートパイロットはやっぱり失敗策だな。
桃島、さっき黙ってろっていったし! あかねは、悪くないもん!
・・・
宇宙船に1年も乗っているのは苦痛だ。
大型船と言っても、操舵室と自分の部屋、シアタールーム、プールとジム、食堂くらいしか行くところがない。
一月もすれば、やることが無くなるし飽きてしまう。
結果、食べることだけが唯一の楽しみになって来る。
ゆえに船内の食事メニューは、リクエストが無い限り同じものが何度も出されないように工夫されているのだ。
しかも、調理ロボットがレシピ通り忠実に料理してくれるので、どれもうまい。
ただし、食べ過ぎに注意しないと1年後には見るも無残な姿になってしまう。
俺は菓子を大量に持ち込んだ佐々木が火星に着いた姿を想像して気分が悪くなった。
次回へ続く・・・
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