第7話 ◆宇宙船AI=あかね
◆宇宙船AI=あかね
次の日、一条マリエは約束通り、オンボロ宇宙船を本社ビルの屋上駐機場に着陸させた。
へぇ・・ 飛べたんだコイツ。
当たり前です。 あたしがメンテナンスしてるんですから火星にだって行けますよ。
なっ・・・ おまえ、なんでもう行先を知ってるんだ?
そう聞いた後の一条マリエの固まった表情を、俺は一生忘れないだろう。
昨日は船内を見ていなかったので、屋上に来たついでに中に入ってみる。
この宇宙船は、大きく操舵室、居住区、貨物室、緊急用小型艇格納庫の四つに分かれていた。
船内は外観ほどボロくはなく、清掃ロボットもきちんと機能しているようだった。
製造当初は太陽系外まで航行可能という触れ込みだったらしく、居住区の中にはジムやプールやシアタールームなども完備されている。
これならば片道1年の旅も退屈しないで済むだろう。
最期に一条の案内で操舵室へ向かう。
俺は火星に向けて出発するにあたり、ぜひ確認しておきたいことがあったのだ。
そう、オートパイロット機能とその他船内の全制御を司るAIシステムのチェックだ。
俺たちは火星への往復で、このAIに命を預けなければならない。
例え海賊に襲われなくても、宇宙には危険がたくさんある。
些細な事で乗員が命を落とした事例は山ほどあるのだ。
一条君、AIとコンタクトできるか?
はい。 それでは、こちらで生体認証登録とパスワードの設定をお願いします。
一条がゆび指した端末で、両目の網膜と虹彩認証のスキャン登録を行い、続けてパスワードを設定する。
桃島さん、パスワードは誕生日とかダメですからね。
わーってるって。 ←桃島は分かってると言っている。
登録が終わってキャプテンシートに腰を掛ける。 自分でちょっとカッコイイと思う。
AIシステムが搭載されたことで、免許がなくても民間の中型船までは誰でも船長キャプテンになれる。
それゆえ、責任者としてAIシステムを入念に確認しておきたい。
あとからプロジェクトメンバーに、うだうだ非難されたくないしな。
では、システムを起動します。 一条がメインスイッチをONにする。
真っ黒だった前方の大型スクリーンが青白く輝きだす。
RAG号起動しました。 オートパイロットは、あかねが担当デ~ス。
スクリーンに大きく映し出された映像を見て俺は叫んだ!
なんだこりゃあ・・・
次回へ続く・・・
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