第6話 ◆宇宙船RAG号
◆宇宙船RAG号
俺は今、本社ビルのある管理区の外れにある、解体業者のスクラップ置き場に立っている。
目の前には、薄汚れて今にもバラバラに崩れ落ちそうな宇宙船が解体の順番を待っていた。
おいおいマジか。 まさかこれほどだとは思わなかったぜ。
これ、ほんとうに飛べるやつなの?
ここまで案内してくれた解体業者のおっさんに念のため確認してみる。
さぁ・・ あとでうちのエンジニアが来るからさ、そいつに聞いてみてよ。
あっ、もう代金は振り込んでもらってるんで、3日以内に引き取ってもらえます?
それは、飛べた場合だろ!
いや、次に解体する予定の機体が届くんで、引き取ってくれないと困るのよ。
燃料はサービスで満タンにしとくから。
おっさんの厄介物は早く処分したい感が半端なく伝わって来る。
一応聞いておくけど、こいつオートパイロットついてるよね?
ああ、ついてる、ついてる。 お兄さんラッキーだったね。 実はこの機体から標準装備が義務付けられたんだよ。
えっ? ちょっと待ってくれ。 それじゃあ、あの悪評高いAIの・・・
いや、ほらっ。 なんていうの? ここまで無事故なんだから大丈夫じゃない?
おい! 最期なんで微妙に語尾上がりの疑問形なんだよ。
おっさんが、しまった言うんじゃなかったという顔をしながら適当なことを言う。
あっ、ほら。 向こうから歩いて来る、あいつがエンジニアだから。
おっさんの視線の先に、眼鏡をかけたチビの女がトボトボ歩いているのが見える。
あれがエンジニアだって?
もう駄目だ・・・ 母ちゃん、親孝行できなくてすまん。
あの~ あなたが桃島さんですか?
俺が目を瞑っていた短い間に、いつの間にか隣に眼鏡女が立っていた。 こいつ、あの距離をもう歩いて来たってのか?
それとも俺が想いに耽っている間が意外に長かったのか・・・ まあ、どっちでもいいか。
そうだけど。 あんたがこの会社のエンジニアさんだって?
はい。
直球で聞くけど、この船飛べるの?
・・・
おいっ なんで黙ってるんだよ!
飛べないことはないんですけど・・・
お姉さん、歯切れが悪いね。 こっちは命がかっててるんだ。 はっきりしてくれるかな。
飛べます。 ただし条件付きですが。
はい来たよ。 最初に言っておくが、お金なら無いぜ。
違います。 この子を飛ばすには、エンジニアの常駐が必要なんです。
ふ~ん。 で?
この船を動かしたいのでしたら、あたしを雇ってもらえませんでしょうか。
いやいや、あんたココの社員じゃないの?
いいえ、ただのアルバイトです。
ふむ。 雇用するのは無理だけど期間契約なら可能だ。 どうする?
そ、それで結構です。
よし! それじゃあ早速だが明日の午前中に、このビルの屋上の駐機場までそいつで来てくれ。
俺は、持ってきた地図と名刺を眼鏡女に渡してから気づいた。
あんた名前は?
一条マリエです。
駐機場の管理人には話を通しておくから、着いたらその名刺の部署まで来てくれ。
わかりました。
それじゃ、よろしく!
こうして、俺はみんなが乗る棺桶、いやオンボロ宇宙船を調達したのだった。
次回へ続く・・・
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