第5話 ◆キックオフ

◆キックオフ


13:20 佐々木つぐみが、ふらふらと第三会議室に現れた。


目には薄っすらと涙が浮かんでいる。


桃島さん、あたし・・・ うぐっ えぐっ・・


いいから、そこに座りたまえ。


俺は、入口入って直ぐの電子ボード前の席をゆび指した。


トスッ  バイイイ~ン


そんな音が聞こえてくるかのように、腰を下ろしたつぐみの胸が上下にゆっくり波打った。


どうやら、あの菓子には不思議な力があるらしい。  そして、つぐみは菓子を食べたのだ。


あの菓子を食べた者は、俺様に逆らえなくなるというか絶対服従するというか、まあそんな感じだ。



さて、今日は第一回のプロジェクト会議なわけだが、まずはプロジェクト概要の説明と今後の方針についての意見交換を行いたい。


プロジェクトの概要は簡単に言うと火星までの物資搬送だ。


そして最大のリスクは、スペースパイレーツによる宇宙船の攻撃および物資の略奪だ。


かなり危険が伴うが諸君への高額報酬は約束されている。


先輩、報酬ってそんなにいいんでしょうか?


俺が聞いたところでは、もし成功すれば帰還後は一生遊んで暮らせる額だ。


おおぉっ!


犬居、猿渡、雉田の三人の目が輝く。


しかしだ。  その代わり護衛艦などは一切付かない。


そ、それは、なんでですか?


その費用が全て報酬に回っているからだ。


そんな無茶な!


慌てるな!  これには深い理由がある。


深い理由ですか?


そうだ 雉田。 君が海賊だったとしよう。 もし、護衛艦隊を伴った宇宙船が火星を目指していたらどう思う?


う~ん、そうですね・・  かなり価値がある積荷を乗せていると思います。


それだ!  そう思えば、海賊はどうする?


それは、襲撃して積荷を奪います!


それが、護衛を敢えて付けない理由だ。


なるほど・・・


これだけで、リスクは半減するだろう。


更に本プロジエクトにはもう一つの秘策がある。


桃島、それはなんだ?


まあ、慌てるな犬居君。


猿渡君、君が海賊だったら新型宇宙船を見つけたらどうするかな?


そりゃあ拿捕して、積荷を奪うか船ごといただくだろうな。


じゃあ、佐々木。  海賊がそんな気にならないためにはどうしたらいい?


えーーっと  船がボロイとか・・・


そうだ! まさしくそれだ!


今回は、来月で引退しスクラップにされる予定だった船を使う!


ええーーーっ!!


誰がどう考えても、ボロボロの宇宙船がヨタヨタと飛んでいるのを見ても襲撃するだけ無駄って思うもんだろう。


でも、そんなボロ船で本当に火星まで飛んでいけるんですか?


ハハハ  あとは君たちの運次第だな。


では、本日の第一回プロジェクト会議は、これで終わる。  解散!



次回へ続く・・・

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