第3話 ◆判明
◆判明
佐々木つぐみに聞いたところ、今回の仕事は火星にある工事現場へ資材や工作機械を届けることだった。
確かにうちの会社は商社的な仕事をしているが、物資搬送はいつも別の会社に発注しているはずだ。
それがいろいろ聞いていくと、それは全て断られたらしい。
ということで、納期的に社内で対応せざるを得なくなったそうだ。
問題は何故搬送を断られたかであるが、これはスペースパイレーツが頻繁に出没するかららしい。
なるほど、佐々木つぐみが絶対にいやだと言うのはこれで納得できた。
現在はナショナルスペースエージェンシーが無能なため、宇宙空間はやりたい放題になっている。
これは職員(戦闘員)の危険手当があまりにも高額であることと殉職率65%で慢性的に人員不足のためらしい。
これはどちら側からみても仕方無いと思う。
・・・
それで、一応聞いておきたいんだけど、この仕事を受注した奴って営業3課のだれ?
えーっと それはですね・・ そのーー なんといいましょうか・・・
やっぱりお前なのか!
だ、だって仕方がなかったのよ。 ノルマが達成できなくて、このままじゃクビだって・・・
うるさい黙れ。 おまえのせいで俺は海賊に殺されるんだぞ!
まだ、殺されるとは限らないじゃないですか。
ほぉ~ で、おまえはこの仕事を断ると。
だって、あたしまだ22歳なのよ。 新入社員なの! これから素敵な恋愛して結婚して・・・
それは、もう諦めろ。 自分で取った仕事だろ。
いやっ、絶対にいや!
ほら、まだ殺されてしまうとは限らないじゃないか。
桃島さんって酷いっ! なんでそんなに信憑性のないことを平気で言うんですか!
おいおい、おまえが最初に言ったんじゃないか。 とにかくもう諦めてとっととプロジェクトに参加しろ。
それとも辞表を提出して、さっさと会社を辞めるんだな。
そんな・・・
佐々木つぐみは、膝からガックリとその場に崩れ落ちたが、俺の知ったことではない。
今は、AIやロボットが人間の代わりに溢れて、人ごときが簡単に転職できる時代ではない。
大学卒業時に政府から斡旋された会社におとなしく入社して一生を送るしか生きられないのだ。
女性は産休など取れば、その間同じ仕事はAIやロボットが代わり、もし指定日に職場復帰できなければそのままクビになる。
なんとも生きにくい世の中なのだ。
・・・
こうして社内を一巡りした俺は、自分の席に戻り、頭を抱え込んだのだった。
次回へ続く・・・
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