第16話 余韻
今 俺は 一ノ瀬ひかるの中にいる
一ノ瀬から吐息が漏れる
一ノ瀬の手が 俺の背中に両手をまわす
二人は 砂漠の中のオアシスで 池の中を泳ぐ魚になった
俺が激しく貫く度に 一ノ瀬の吐息は悲鳴に近い吐息に変わる
やがて 砂漠にかかる虹色の架け橋を渡る頃 俺は 無我夢中で一ノ瀬の体の芯を貫いた
二人は果てた
俺は カバンの中から煙草を取り出した
「吸っていい?」
『ちょっと待って はい これに灰入れて』
俺は 深呼吸するように ゆっくり煙草の煙りを吸い込んだ
『秀 煙草吸うんだ 私もだけど』
そういうと 一ノ瀬は 机の引き出しから メンソールの煙草を見せた
『火ぃ頂戴』
「あぁ」
二人は 肩を寄せ合い 宙を舞う紫煙を観ていた
『私って秀の何?』
「・・・ん」
『どういう存在?』
「今は 彼女かな そんな気分だけど・・・」
『昔の秀と変わったね 高校時代の秀は 何か頼り無かったけど・・・ 今は違う』
「どういう風に」
『男らしくなった すごい逞しく・・・』
「ありがと」
『私って馬鹿かな ず~っと秀の事見てきたのに 何にもわかってなかった 嫌な女 駄目ね』
俺は 缶ビールを飲み干した
そしてまた一ノ瀬を抱きしめた
『う』
「俺たち 付き合おう いい?」
『・・・』
「いいだろ?」
『まじで?』
「うん」
『嬉しいかも 何か涙出てきた 馬鹿ね』
「馬鹿じゃないよ いい女だ」
『そんな特別な女の子じゃないよ』
「俺には 最高だよ」
俺は 一之瀬にキスをした
一ノ瀬の舌が絡まる
「白井さんたちに 感謝しなくちゃ」
『かもね』
「今 どんな気持ち?」
『特別 言葉じゃうまく言えないよ』
「そうか 缶ビールお替りある?」
『うん 飲もうか 今 持ってくる』
一ノ瀬が 一階の冷蔵庫に缶ビールを取りに行った
俺は ベットを見た
シーツが乱れている
一ノ瀬が 冷たい缶ビールを持って来た
『秀 よろしく』
「こちらこそよろしく 乾杯」
『乾杯』
二人 夜が明けるまで語り合った
本当に俺は
一ノ瀬のことが好きになった
「じゃあ 俺帰るから」
『うん もう無視しない いつもの時間のいつもの車両で待ってるね じゃあね』
家に帰った
洗面台の前に立って 歯を磨いていたら 喉に一ノ瀬のキスマークがついていた
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