第13話 白井先輩って
今 麻雀の真剣勝負中だ
白井先輩が 席順を決める 東南西北の牌を並べながら 東大生コンビに質問した
「おい 東大コンビ お前らの名前 聞いてねえな 教えろよ」
眼鏡をかけた男が 突然笑いだした 不気味な男だ
「けけけけ 名前かい 後生に聞きたいのか 俺は 通称 鶯 東大麻雀同好会の四天王だ」 そして鶯は 眼鏡を右手中指で額に翳した
小太りのインテリ風な男が 頷くように喋った
「ふふ 俺は 同じく東京大学麻雀同好会四天王 法華経だ」
「いわゆるコンビ打ちかい」
鶯が 声を押し殺すように 白井先輩に語りかける
「お前らは何だい?」 そして眼鏡を拭き直した
「兄弟コンビとでも言ってもらおうか」 白井先輩もドスの効いた声で答えた
法華経が せせら笑う
「ふふ けけけけ 腹違いの兄がいるくせに 今度は赤の他人の舎弟とコンビかい 笑わせるぜい」 そしてネクタイをゆるめた
「何とでも言え 俺が親だ この席でいい」
こうして 鶯が南家 法華経が西家 俺が北家に席についた
そしていよいよ勝負が始まった
さかんに白井さんが足を踏む もうすでに鶯も法華経も聴牌状態だった さすがコンビ打ちだ
白井先輩も俺も 現牌で逃げ切る だが追いつかれる
「積も タンヤオ ドラ1 2千 千だ」 法華経が積もった
その後も鶯も法華経も聴牌が早い
白井さんから サインをもらってマンズのドラ牌を麻雀卓の下から すり替えた
「リーチだ」
白井さんが リーチをかけた
「ロン 三色 ドラ2 満貫だ」 鶯も上がった
回を進めるほど 東大コンビの 鶯も法華経も どんどん闇聴で上がっていく
追い詰められる 苦しい 後が無くなって来た もう逃げられない
オーラスになった 俺が親だ 配牌でマンズが集中して集まった
俺は 考えた ここはチンイツでいけると・・・
俺が 白井先輩に逆にサインを送った 白井先輩は 何やら感づいた様だった
白井先輩が頷く ドラ牌のマンズの六をもらった
東大コンビは 俺には目もくれていない チャンスだ
再度 俺は 白井さんにサインを送った マンズの三を交換し俺は 聴牌した
一四待ちのマンズだ
すぐさま鶯が 一のマンズを切った 「ロン 面チン ドラ2 倍万」
「く この坊やが~!!」 鶯が山を崩し歯軋りしながら悔しがった
「だから言ったろ 兄弟コンビってな」 白井さんに笑顔が戻った
「糞!」 法華経も額から汗が流れ始めた
それから 俺と白井先輩のコンビは 面白いように上がり続けた
鶯と法華経の顔色が変わった
次の半荘 俺は 鶯と法華経の妙な動きが気になっていた
俺は 白井先輩にサインを送った
白井さんも気づいていたようだ 法華経の積もが右手から左手に変わっていたのを・・・
白井さんが 法華経の3順目の積もの時 右手をぐっと突然掴んだ
「う・・ 痛っ・」 法華経の手からマンズの3と中が落ちた
「何で マンズのドラと引き牌の中 両方持ってんだ? えー! 見え見えなんだよ コンビ打ちなんてな」 白井先輩の迫力のある行為に鶯が下を向いた
「うう」 法華経が 悲鳴に近い声を上げた
「勘弁してくれ 頼む 東大麻雀同好会のメンツもある 10万で許してくれ お願いだ」
「どうする? 秀 お前が決めろ」
俺は ここぞばかりに大きな声を上げた
「ふん!! たかがその程度か 東大四天王! よし! 即金で10万で許してやる 俺はH大の秀だ 白井さんの舎弟だ よく覚えておけ!」
我ながら 良くこんなことを言っていいのかと思うほど 威勢良く怒鳴った
麻雀卓に諭吉札が10枚並んだ
それを 白井先輩は鷲掴みにすると その場から俺と一緒に消えて行った
「秀 お前博才あるな いや関心した ほれ5万 受け取れや」
「はい」
俺は 興奮していた まさかの大勝負 本当にツキが味方してくれたのだ それだけだ
「秀 新宿で軽く 一杯飲んで行くか?」
「いいですね 行きましょうよ」
二人は 山手線で新宿に向かった すごい人ごみだ 白井さんが メールを打っていた
ホッピーの匂いともつ焼きの煙り 煙草の紫煙と男と女 赤の他人の義兄弟 会社の上司と部下 ましてや同性愛者 孤独な人 いろいろな人がこの密集地帯に集まって来るこの街
いろんな人間模様が交錯する まさにスクランブル
俺は 白井先輩に問いただした
「白井さん お兄さんって腹違いだったんですね」
「奴とは 縁を切った 今 親父の会社で副社長やってるがな チンケな奴だよ」
「それで東大 軽蔑してたんですね?」
「あぁ あいつには 何人もの家庭教師がついてた 俺は 一人だった 所詮お坊ちゃんは 東大なのよ 俺は 力や名誉なんてどうでもいいんだ 気楽に好きに生きていければ 今日と言う日は 二度と来ない だから 楽しく精一杯生きようって思ってな あはは」
「そうか~ 今日と言う日は二度と来ないんですよね 今一秒でも大事に生きたいですね」
「あぁ~ 秀 一ノ瀬にちゃんと謝れよ 遊びじゃなかったってな 女の純な気持ちは 大事にしろ 一之瀬も秀も俺から見たらまだ子供だ いいな」
「はい あ もつ焼き来ました」
「ぎょうさん 七味ふれや 辛が酒には よう似合っちょる」
この日は 白井先輩と男と男の話が沢山出来た
俺は 一度 板橋まで帰ったが 酔った勢いだろうか 急に可憐さんに逢いたくなった
折り返して新宿の 可憐さんのガールズバーに行った
『あ 秀君 いらっしゃい うちのは?』
「えへ 今日は 一人で来ました 可憐さん貸切でお願いします」
いつの間にか朝になって 自分の部屋でベッドに横たわっていた
携帯に加代さんからメールが入っている 『さよなら』と・・・
朝陽が俺を照らす
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