第10話 浮気発覚

俺の憧れのマドンナの 中野可憐さんも ワンダーフォーゲル同好会の会長 白井祐也さんと結婚した もう憧れのマドンナは 永遠の幻と化した


昨日は 誕生日だった 晴れて19歳 彼女の加代子さんに お祝いの腕時計をもらった

もちろん 二人の肉体関係の情も交わした 今日は 日曜日 加代子さんとデートだ

二人は 渋谷に繰り出すと 109へ足を運んだ 

姉の芽衣も109のブティックでバイトをしている

遠目から姉の芽衣を見た 若い女性客を接客しているようだった

自分の姉と言うのは いつも一緒にいるから気づかないが客観的に見ると可愛いと思った

何故 こんな美しい姉に彼氏ができないのが 不思議でならない 憧れが強いせいだろう


「あれ 俺の姉ちゃんだよ」

『嘘 いくつ?』 加代さんは 目をぎらつかせる

「二十歳 ファッションデザイナーの専門就職大学に通ってる」

『じゃあさ 私 お姉さんに服をコーディネートしてもらうね いいでしょ』

「いや~ 今度でいいじゃん 先行こうよ 加代さん」 芽衣に知られるのが怖かった

『どうせならご挨拶がてらに ちょうどいいじゃない 照れてないで 行こうよ』

俺の腕を 加代さんは ぐいぐい引っ張る

『いらっしゃいませ』 芽衣は 横目で俺を見るとそっけない態度をとった

『あは 弟の秀君とお付き合いしてる 宮田加代子です 服選んで欲しいんですけど』

『あら 初めまして どんなのお好みかしら?』

『あんまり派手じゃなく それでいて躍動感がある感じの』

『これなんかどう? フリルがついてかわいいでしょ あとこちらの物も当店の売れ筋ですよ』

『ジーンズに似合うやつ これでいいわ ピンクのね』

『はい じゃあ 3、980円になります』

『はい 5千円』

『今 包装して お釣り持って来ますね お待ちください』 

そういうと姉の芽衣は 商品と代金を持ちレジの方へ歩いて行った

『秀 あんたのお姉さん かわいいじゃない 彼氏とかいないの?』

「なんだか 最近ふられたらしいよ 姉ちゃん面喰いだからさ 妥協を許さないっていうか」

すると 芽衣がお釣りと商品を持って 加代さんに元へそれを渡しに行った

『じゃあ お釣りです あとこれ それと 弟をよろしくお願いします ありがとうございました』

『ふふ うちらは順調よ 秀君のことは 任せてね じゃあ』

そう言うと 加代さんは ニコニコ顔で109を後にした

『へぇ~ 秀の家系っていいね 秀もイケメンだし お姉さんもかわいいのね』

「そうお 俺 母親に似てるって言われるけどね」 無事買い物が終わってホッとした


渋谷の街を歩いていたら 一ノ瀬ひかると背の高いワンダーフォーゲル同好会の市川勝さんと遭遇した

「あ 一ノ瀬 お前もデート?」

『まぁ デートって言えば デートかも ね 市川先輩』

「秀 その人 お前の彼女か?」

市川先輩は どちらかと言えば体育会系だ 突然不躾な質問だった

『彼女の宮田加代子です どうぞよろしく』

『秀 生ビールのサービス券があるの 一緒にどう?』 出た さすが酒豪一之瀬だ

一ノ瀬の目が光る

「どうする 加代さん?」

『いいわよ ちょうど喉渇いてたから 一緒に飲みましょ』


4人は 【鳥元】という 全国チェーン店のお店に入った

生ビールと焼き鳥セット サラダ お刺身の盛り合わせを注文した

いつのまにか 一ノ瀬と加代さんの激しい女の闘いが始まった


『あなたが秀の彼女なんですか?』

『もしかして あなた昔付き合って 秀と別れた子ね 未練でもあるの?』

『未練なんて無いです でも 加代さん あなた上手く言って 秀の事誑かししているんじゃないの? 最近の秀何かおかしいもん』

『すいませ~ん 生ビールお替りください』

『あ じゃあ追加で 私ももう1杯~』


加代さんも飲む 一ノ瀬も負けずに飲む 市川さんは唖然となっていた


「ところで 市川先輩 どうして 一ノ瀬とデートなんですか?」

「映画のチケットが2枚あったから それに一ノ瀬 飲むの好きだろ だから」

「てっきり 俺 一ノ瀬と市川さん 付き合っていると思いました」

「小声で言うけど 今夜 一ノ瀬にアタックするつもりだ」

「応援してます 頑張ってください」


その時だった

『何よ~ 秀のことは 昔から私の方が知ってるんだけど~』

『過去は 過去よ 今 付き合ってるのは 私よ 文句あるの?』

『実は この間 秀と私 セックスしたんですけど!』

『何よ! この泥棒猫!』

パシッ! 加代さんが一ノ瀬の頬を平手で引張叩いた

俺と市川先輩が止める

『市川先輩 もう行きましょう こんなまずい酒 もう飲めません』

一之瀬と市川先輩が 店を後にした

『秀 あんた浮気したのね 私帰る じゃあ』


一人取り残された俺は 会計を済ませると表へ出た 身から出た錆だろうか

その日は なかなか寝付けなかった 加代さんにメールを打っても返事は無い


窓の外の三日月が 妖しく笑う 



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