第9話 白井さんと可憐さん結婚

今日は 晴天 ワンダーフォーゲル同好会主催のバーベキューの日だ

この日 俺は7時半に起床すると 外の天気を伺った

うむ 行ける 雨は 降らない そう確信すると自分で服をコーディネートして 8時に外に出かけた 板橋駅で一ノ瀬ひかるが待っている

『おはよう』

「うん おはよう じゃぁ行こうか」

二人は 池袋で下車すると そのまま東武東上線で森林公園まで 特急で向かった

そのままバーケキュー場までたどり着くと あらかじめ一ノ瀬の作ったアルコール注文表で 酒屋にオーダーを入れた この辺の濃密な切れ味は 一ノ瀬らしい

『ふ~ 私たちの役割は終わったわね』 満足げな一之瀬

「でも 一ノ瀬ってすごいな~ 誰がどのくらい飲むか みんな知ってるんだもん」

『あぁ この間の新入生歓迎会で だいたいわかったから 今回はノンアルコール注文してないわよ  もうお酒飲めるんだもんね 秀も』

「うん 俺もう飲めるから 心配しないで」


そうこうしているうちに 集合時間の11時になった

みんな集まった 酒も肉も野菜もある  女子は 野菜をカットして 男性陣は バーベキューの火を起こす 11時半 肉や野菜を焼き始めると みんなで乾杯を交わした

これが憧れのキャンパスライフなのだ


会長の白井祐也さんも 満足している

中野可憐さんも 野菜を焼くのに協力している

みんな紙のプレート皿で 早くも肉を取り 食べだした

みんな嬉しそうだ 思い思いにとりとめのない語り合いをしながら 楽しく飲みそして食べる

またしても一ノ瀬の飲むペースが早い

あいつは キス魔だから 今日も犠牲になる奴はいるのだろう できれば関わりたくない

そんなことを考えていたら 突然 白井先輩と可憐さんがみんなの目の前に立った


「諸君 聞いてくれ! 俺と中野可憐は 今朝婚姻届を出した 今日が その第一歩だ」

『みんなこれからも よろしくね』


俺は 飲んでいたビールの入っている紙コップを思わず 落とした

一ノ瀬は 口を開けたまま 無言の表情に変わっている

同好会のメンバーの間では もうすでに知らされていたのだろう 熱い拍手を送った

俺も紙のプレート皿を置き 拍手を送った え 知らなかったのは 俺だけだったの

なぜか虚しくなった あの憧れの可憐さんが消えて行く 人妻になってしまったのだ

俺のキャンパスライフにも 半分翳りが見えてきたように思えた

白井先輩と麻雀したり 可憐さんの務めるガールズバーで遊んだり・・・

無邪気な面影だけが 心に刻まれた


帰りの電車の中で 妙に一ノ瀬が 慣れ慣れしたっかた 一ノ瀬は酔っていた

『秀 最近変わったね 今日は 私を好きにしてもいいよ 何だかそんな気持ち いいでしょ』

今日は キス魔でなく 違う発言だった 俺も不埒だった

付き合っている加代子さんのことなど どうでもいいと思った


池袋で下車すると 俺と一ノ瀬は ホテルに入った

一ノ瀬が ブラジャーを脱ぐ

胸に米粒ほどの ほくろがある 懐かしい この日 俺と一ノ瀬も 結ばれた


窓の外は いつのまにか春の嵐に変わっている




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