第8話 キスマーク
しばらくぶりの家族4人で摂る朝食も懐かしく感じる
父の修が 新聞を読みながら 俺に質問してきた
「どうだ? 大学生活は?」
「う~ん 何て言えばいいのかな 俺って中途半端じゃん まだ18歳で未成年だし 先輩は大人だけど その点 矛盾してんだよな~」
『あら 芽衣だって専門学生の1年生の頃は おとなしくしてたわよ』
「そういや 姉ちゃん ブティックでバイトしてるんだよな 家にいくら入れてる?」
『月3万 後は私の洋服代だけど 秀は いくらいれるの?』
「じゃぁ 俺も3万 いいだろ おふくろ」
『そうね~ 3万でもいいわ うちはまだお父さんの給料で賄いできてるから 家のローンにまわすわ』
「よし 母さん 俺行ってくる じゃあな 秀 芽衣 頑張りなさい」
朝食を摂った後 俺は 姉の芽衣にコーディネートしてもらう
最初は 俺が嫌がっていたが ファッションデザイナーの専門職大学に通う芽衣には それが勉強になるのだ
『う~ん ジャケットもいいけど パーカーにしようよ ボーダーの』
「これ?」
『うん それ 着てみ』 俺は まるで姉の着せ替え人形だ
『ましじゃん で ジーンズ よし完成 じゃぁ 秀 私も学校に行くね』
「うん」
この日 2時限目からの講義だったので 俺は市ヶ谷のスタバでアイスコーヒーに ミルクをいっぱいに入れてガムシロップもたっぷり目で 窓際の席に座った ストローを噛む
学生で混んでいる
『あら 秀 おはよう』 一ノ瀬が コーヒーを持ってやってきた
「おはよう」
『昨日 秀何してた?』
「何って 映画観に行ったけど」
『もしかして 彼女できたの?』
「うん」
『どうりで 首にキスマークがついてるよ』
一ノ瀬は 俺の隣の席に座ると手鏡で 俺にキスマークを見せた
「あれ そんなに激しくしてなかったけどな」
『馬鹿じゃない キスマークつけて はい カットバン これつけて隠して』
そう言うと 一ノ瀬は 俺のキスマークの場所にカットバンを貼り付けてくれた
『ねぇ 彼女っていくつ?』
「22歳」
『遊ばれんのよ 秀』
「何で そんなこと言うんだよ」
『さぁね それより 明日同好会のバーベキューよ 私とあんたが酒持ってっくんだって』
「あ~ 今朝メール入ってた 紙コップと焼酎とウーロン茶に氷 あと日本酒だっけ」
『スマホで調べたら 酒屋の出前があるって 場所さえ抑えておけば配達してくれるの』
「さすがじゃん 一ノ瀬 頼りになるな」
その日は 講義が終わると ワンダーフォーゲル同好会員が みんな一同に集結した
可憐さんが仕切る
『場所と酒の確保は 島崎君に一ノ瀬さん 火の担当は 藤谷君に三浦さん お肉の担当 峰さんと桜田君 野菜担当は 関石君に斉藤さん ・・・・
以上のメンバーで役割を決めましたから 基本4年生は 役割無しです 後お酒は 持ち込みOKだから ここにパンフレットがあるから 後で見てね 時間厳守よ 白井先輩何か?』
そう言うと 煙草を吸いながら 長い髪の毛をかきわけ 白井さんが みんなの目の前に立った
「毎年恒例だ いつものメンバーだし 明日は 楽しく行こう 以上だ」
そう告げると 白井さんは 煙草を揉み消して 同好会室から出て行った
残された2年生や3年生が パンフレットと案内書を持って目を通すと笑顔でみんな解散した
『じゃぁ 1年生 後はよろしくね』 可憐さんも去って行った
同好会室を 簡単に掃除して 1年生もやがて消えた
この日俺は 板橋駅の[和尚]という居酒屋で 彼女の加代さんと待ち合わせしていた
『秀~ こっちこっち』 加代さんが手を振る
「お待たせ~」
『明日どこか行くの?』
「うん 森林公園」
『いいな~ みんなで?』
「同好会でね」
『私も行っちゃ駄目?』
「加代さんは うちの大学生じゃないもん これっばかりは 無理だよ」
『まぁいいや お腹空いてるの 早くなんか食べよう』
「うん」
この翌日の大惨事に俺は 全く気づいていなかった
嵐の前の静かな幸せに俺は ただただ満足していたのである
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