第6話 加代さんとデート
日曜日深夜 タクシーで家に帰ると 姉の芽衣がお風呂に入っていたのだろうか 髪を乾かしていた 横目で俺を見るなり小姑の様に喋りだした
『秀 あんた大学に入ってからいつも帰宅は 深夜じゃない 何かしてるの? う 酒臭~』
「うん バイトとか 今日もサークルの人と飲んだしさ」本当にいい気分だった 可憐さ~ん
『あんた ずいぶん遊んでいるけど お金持ってるの?』 芽衣は 怖い目で俺を見る
「うん 今も1万円以上もあるよ」
『まぁ いいや お風呂の残り湯あるから浴びてきな』
「うん」
『あんた まさか彼女とかできたんじゃないだろうね』
「できたよ 年上の人 優しくて可愛いんだ」
『はぃはぃ まぁ がんばり~や じゃあね』
最近は親子4人で 食事することも無くなった 母はリビングでテレビを観ている
大人になるにつれて 家族と一緒にいる時間も段々消えていくのかな~~
俺は 風呂から上がるとスマホをもって リビングに行った
『あら 秀 あんた食事は? う それより何 酒臭いわよ』
「うん 今日もサークルの人と遊んだし 平日は バイト先で賄いがあるから 当面食事はいいよ」
『秀 あんたなんとなく男らしい顔になってきたね さすが私似 いい男よ』
俺は 母の言うことを無視してスマホでメールをチェックした
可憐さんからのメールもある なんだかドキドキするな~ なぜだろう
加代さんからのメールもあった 『朝起きたら 電話頂戴』 なんだろう?
あ~ 何だか眠くなってきた 俺は そのまま自分の部屋のベッドになだれ込むと寝ていた
翌日 朝の10時に加代さんに電話を入れた
『はい 宮田です』
「あ 秀です 昨日は電話できなくてすいませんでした どうしたんですか?」
『映画行かない? 観たい映画があるんだけど チケットも2枚あるし』
「いいですよ じゃあ11時 板橋駅前で」
家族は もうすでに食事を終えていた 俺の器だけが テーブルに残っている
『秀 ご飯は?』
「うん いいよ 外で食べる」
姉の芽衣が 珍しく勝負服を着ていた
「姉ちゃん 俺の服も コーディネートしてよ」
『ふん 好きなの着れば 今日私もみんなで浅草巡りなの もう行かなくっちゃ じゃあね 秀』 自称面喰いの芽衣だけに男もかなりイケメンなのかと 想像してしまう でも芽衣は
押しが弱い 競争率の高い男に積極的になれないのだ これは 同じ姉弟として血が一緒だ しょうがなく いつも学校に着ていく服を無難に着こなし 整髪もした
「母さん 今日も遅くなるから 晩飯いいや」
そういい残すと街へ出た いつも通る道だが 花がいっぱい咲いている
何だかか嬉しくなってくる 板橋駅前に着くと もう加代さんはすでに待っていた
「加代さん こんにちは~」
『秀 いつも夜のデートだけど お昼に逢うのもいいよね じゃぁ行こう』
この日は 祭日だ もうGWに突入している 連休の昭和の日 どこを見てもカップルだ
二人は とりとめのない会話で新宿に出かけた 昨日の夜は ここでバカ騒ぎしたばかりだった ほんのりとだが まだその余韻が残っている 加代さんといるが 心は 可憐さんで
いっぱいだ こういうのでも彼氏と彼女って言うのかな 俺には 難しい選択になっていた
何気に新宿を歩いているとどこかで見たカップルが 仲良さげに腕を組んで歩いていた
遠くの方で ワンダーフォーゲル同好会会長 白井祐也先輩と憧れの中野可憐さんが歩いている どう見ても彼氏と彼女だ まさか二人は 出来てたのか う~む 妖しい
二人とも映画館に入って行く 俺と加代さんもその後を追いかけるように着いていった
やがて 映画の上演時間が迫ってきた 幸いなことに 白井さんも可憐さんも俺に全く気づいていないようだ
映画館の中では 指定席なのだが 白井さんと可憐さんは前の方の席だった
僕と加代さんは後ろの席 やがて映画は 始まった 戦闘シーンやラブシーンもあり 観ていて興奮してくる 最後のエンディングでは 観客席から涙をすする音も聞こえてくるほどだ
加代さんも泣いていた もっと驚いたのは 可憐さんが 白井さんの肩に抱きついて泣いていた事だった 俺には それが事件だった あの憧れの可憐さん・・ 夢が崩れていく~~
もしかして・・・ 白井先輩と可憐さんって恋人なのかな・・・
白井さんも可憐さんも 映画を見終わると 外に出て行った
『秀 行こうか 新宿のOK横町 24時間でやってる居酒屋多いから行こうよ』
「うん」 覇気が無くなった俺だった
俺も加代さんも映画館を後にした
OK横丁に入ると 居酒屋が何軒かある 俺はただ加代さんの後ろを着いて行った
『秀 ここでもつ焼き食べよう すいません ビール下さい あともつ タン・ハツ・レバー・シロタレでお願いしま~す』 さすが居酒屋で仕事しているだけある オーダーが一発で通った
なな なんとそこには 白井さんと可憐さんがすでにテーブル席で座っていたのだ
「なんだ 秀 お前も来たのか こっちで一緒に飲もうぜ お連れさんも」
「先輩 なんで可憐さんがいるんですか?」
「いるって 昨日の夜約束したんだぞ おかしいやろか」
「加代さん こっちこっち こっちで飲みましょう 俺の大学の先輩です」
『もしかして秀君の彼女?』 可憐さんが目を回るくして呟いた
『はい 宮田加代子です よろしくお願いします 会長ってあなただったんですね 噂は聞いてます』 加代さんは 俯き加減でそう言うと まじまじと白井さんを見つめた
「何だい何だい まぁいい ビールで4人 乾杯しよう な! 乾杯~』
いつのまにか 宴会状態になっていた 相変わらず加代さんの飲むペースは早い 白井さんもだ 可憐さんは あんまり飲まない
「可憐さん 今日も仕事ですか」
『うん 毎週日曜日は 同伴で出勤なの うちの店 今日は白井さんだけどね サークルのメンバー みんなにお願いしてるから そのうち秀君もお願いね』
『だめよ 秀君は私の物だから 誰にも私たちの恋路を邪魔させないわ』
「秀 お前 何かと面白いな いいキャラや 退屈しのぎには もってこいや はは」
白井さんは 煙草を吸いながら 上機嫌だった
7時になった頃 お開きになった 白井さんと可憐さんが去って行った
電車に乗ると 埼京線でうまく 加代さんも俺も座れた
『秀 これから私のアパート行こ ねぇ 今夜はエッチしようね はい 指切り』
俺は 思わず指切りしてしまった
やがて電車が走りだした 加代さんの小さな可愛い手が 俺の手を握る
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