第5話 麻雀初体験

夢だった キャンパスライフも いろいろあり 前途多難だ


バイトも始めた 板橋駅前の[居酒屋 はっちゃん]というお店だ

ここでバイトの先輩 宮田加代子さんと 何と 暫定であるが 彼氏と彼女の関係になってしまった バイトが終わると 加代さんのアパートにいつも行く 彼女は 本当に寂しがりやだ

土曜日 今日もバイトが終わり 春なのに冷たい風に吹かれ 加代さんのアパートに行った


『はい 秀 ビール』

「はい 頂きます 乾杯~」

『ねぇ 今日あたり私とエッチしない? どう?』 加代さんは 煙草を細い指でつまみ燻らす

「ぇ・・・」

『嘘よ 今日生理来ちゃったから 来週ね 明日 日曜日でしょ デズニーランド行かない?』

「あ 明日は 先客があって ワンダーフォーゲル同好会の会長と待ち合わせなんです」

『そうか しょうがないよね 先輩じゃ じゃあキスしよう んってして』 可愛い唇を突き出す

俺は 加代さんに言われるままに キスをした 加代さんの舌が俺の舌に絡まる いつもの事だが 今夜は 煙草のニコチンの味で 気分が萎えてしまう

『へへ 美味しいよ ねぇ 秀 秀の気になる人っていくつ?』

「いや もう吹っ切れました」 半分嫌気が来る質問だ


嘘だ 俺の心の中には 中野可憐さんがいつもいる 暫定的彼氏っていったい何?


『ところでどこで待ち合わせしたの その先輩と』

「高田の馬場のスタバです」

『そっか~ あのへん学生が多いもんね 雀荘も多いよ 秀 麻雀できるの?』

「本 10回読みましたよ ルールは理解したけど・・・ 実践はまだ・・・」

『まぁ いいか 幸運を祈ってるね』


その翌日午後3時 俺は高田の馬場のスタバに向かった もうすでに 白井先輩は来てい た 機嫌がいいのかブラックのホットコーヒーを飲み 競馬新聞を見ている

「おう 秀 来たか ま アイスコーヒーでも飲めや ほら200円」

「はい ありがとうございます」 俺は ミルクをたっぷり入れて 白井さんの前に座った アイスコーヒーのストローを噛みながら喉に注ぐと爽快だった

「秀 本読んだか 今日は 競馬の貯金レースで当たってがっぽり 資金持ってるから 心配すんな ま 初めてのデビュー戦や 負けもあるしな」

「はい だいたいのルールは覚えました 頭二つ 四っつあんこか 数字並べるんですよね」

「だが無理だ 今のお前には できない 国士無双は知ってるな」

「はい 役満ですよね でもなぜ?」

「それは 相手が聴牌した時 降りれるからだ 俺がお前の足を踏んで合図してやるよ」

「はい」

「それにしても お前のアイスコーヒー ミルクいっぱいだな 乳離れしてないのか」

「クリーミーな方が好きで」 俺は 惚けて見せた

「まぁいい 行くか 言っとくが麻雀卓は全自動だ なるべく字牌を手前に入れるんだ いいな サインは まだ決めておらんかったな エレベーターは できないな ま しゃあない」

「はい」 俺には 何の隠語が全く分からなかった


俺と白井先輩は 高田の馬場駅のスタバから 歩いて3分の 雀荘[窓]に入った

[窓]は 2階にある 細い急な階段を 白井先輩は我が者顔で上って行った

「おやじ 学生2名だ 学割で フリーで打たせてもらうで」

中年の頭の禿げたおじさんが 煙草を揉み消すと 窓側の席を指差した

「裕也ちゃん あの窓際の席で煙草吸っている あの二名さん東大だよ 白井ちゃん 負け知らずだもんな どうする? 打つかい? はっきり言って強いよ」 頭の禿げたおじさんは 面白見たさに白井さんにけしかけた


「へん 俺の一番嫌いな東大の坊っちゃんかい あぁいいぜ」 

そう言うと 白井先輩は 窓際の雀卓に向かった やっぱり 白井先輩は 東大を特別に 差別している 白井さんの頭脳で行けば 東大の法学部も楽に合格するのに特別に嫌う

白井さんが 窓際に座っている 東大コンビの元へ歩み奇る


「ほう H大の白井か 哭きの祐也 お前イカサマやってるらしいじゃん いい度胸してやがる」 眼鏡をかけたインテル風の男が声をかけて来た

「ふん 東大のエレベーターボーイ 乾と楓だな 天稟で打とうやないか ええやろ」

「吠え面かくなよ ところでその坊やは 誰だ?」 つり目の楓が俺を指差した

「とっておきの秘密兵器よ なぁ秀だ」 そう言うと白井さんは 妖しく笑った


こうして 俺は 初めての麻雀デビューをした 牌を持つ手が震える 指先に力が入らない

みんな牌を動かすのが早い 追い込まれる さすがの白井先輩も 乾と楓のコンビに押されている 白井先輩が さかんに注意と俺の足を踏む 乾と楓の聴牌の速さに追いつかない

僕は ひたすら現牌で逃げる  白井先輩も喰いつく 

「坊やよ もっと早くできねえか」 畜生 乾が俺に命令する

そんな時だった 自分の手牌を見て驚愕した 国士無双全面待ちだったのだ オーラス積もだった 最後の配牌で俺は東を積もった やった 役満 国士無双の完成だった

「ツモ 国士無双13面チャン待ち ダブル役満」 俺は雄たけびに近い声を張り上げた

「秀・・・」 俺より 白井さんの方が喜んでいた

「くっ こんなど素人に・・・ 浮かばれたな 白井」

「乾 今夜は この辺で許してやるわ 4万6千円 貰うぜ」

結局 俺の国士無双で勝負あったのだ

「秀 学割ついでに 可憐の所行くか」

「あ はい」

「ほれ 2万3千円 お前の分だ 受け取れ」


新宿のネオン街に繰り出した 気分は最高だった

いつも飲んでる 缶ビールも今日はノンアルコールじゃない 本物のビールだ

麻雀もいいもんだ 癖になりそうだ ガールズバー [ピンクキャッツ]の店に繰り出した


憧れの可憐さんが いつもより濃い目の化粧で輝いていた

『秀君 何か 最近男っぽくなったね なんでだろう 逞しく見えるわ』


俺は 飲んだ 唄った 白井先輩も楽しそうだった 俺の携帯にいつのまにか着信があった

加代さんからだった でも 俺は 無視して飲み続けた


店を出た時 ネオンで星は 見えないが 朧ろ月が 俺を笑っていた



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