第10話 大石都々古和気神社
石段を登りきった直子は息を切らしてる。
社殿を見回し、御神木の前へ。
学生鞄を下ろして木に触ろうとしたが柵に阻まれて諦め、鞄を肩にかけた。
白い立て看板に「見張台跡」の文字。
その向こうに林が広がってる。
林の中に入っていった。
立ち並んだ木々は結構高い。5メートルか、10メートルか。
山肌を覆い隠した木々の中は、昼でも薄暗い。
林は下り坂になっていて足元には木の枝やら小石が転がり、
ちょっと気を抜いたら転げ落ちそう。
ローファーでは尚更、直子は慎重に木を掴んで傾斜を下る。
直子の先に木々が途切れた空間があり、中心に動く人影が見える。
さっきすれ違ったお爺さんだ。直子は後を付けてたんだろうか。
暫くお爺さんを離れた場所でじっと見て
突然早足でお爺さんに近づいた。
作業に熱中してたせいか、直子がすぐ横にくるまで気付かなかった様だ。
突然隣に制服の少女が現れたので、スコップで土をかける手を止め、お爺さんは小さく悲鳴をあげた。
「おめ、何処から入って来た」
直子は答えず穴の縁にしゃがんだ。
「これが戦争中作ってたロボット?」
穴を囲む高い盛り土が、最近掘り起こされた事を物語ってる。
直子が立ったまま埋められる程深い。
土が癒着してて、材質は金属と言うより石や硬い土に見える。
私は、前に見た道路工事で地中から掘り出された古い水道管を思い出した。
露呈した部分は右肩と腕が肘の辺りまでと、右胸にあたる部分らしい。
左肩と顔が有るらしい場所も、一度掘り出された様だが上から土がかけられて見えない。
直子が鞄を置き、飛び降りた。
「あっ、こら!入っちゃいかん!」
直子は両手で土を退かし始めた。
お爺さんはやめる様に怒鳴るが、一度で諦めた。
土を退かしきった直子は、顎の辺りに立っていた。
顔は、直子の身長より大きい。
お爺さんは地面にスコップを刺してしゃがんで見守っていた。
「昨日山菜取りにここ来たら掘りおこされてたんでな、
誰かが見つけんうちにと思って今日わしが埋めに来た。
原爆の、二号研究の影で誉田博士が進めとったもんで
こいつは人を殺める兵器だ。
もう動かんが、危険なことは確かだ。
わしがもっと若かったら一人で壊したんだが、もう歳だからな、
せめて埋めてしまおうと思ったんだ」
動かないのか...と直子はつぶやいた。
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