第8話 2番目の夢

この一連の不思議な夢の、2番目の話を書いておこう。


アイスナインで会った次の月曜、学校行ったら、直子は来なかった。

直子にHappiness In SlaveryのRe-mix Ver.が入ったCDを貸そうと思って鞄に入れといた。

このCDを渡したら、きっとあの日のニコニコ顔がまた見れると思ったのに。


現国Bの授業中、くよくよするのをやめて

直子が今何してるのか思いを馳せた。

家で寝間着のまま寝癖の頭かいたりして、TV見ながらパンでもかじってる所を思い描いた。

この時間TVに写ってるのは...

博物館かな。

ガラスのケースに入った展示物が多数並んでる。

一つのケースがアップになり「燐灰ウラン石」とプラスティックのプレートに文字が書いてあるのが見える。


「それはね、日本ではここ石河で最初に発見されたウランでね、燐灰ウラン石って言うんだ」

直子が横を向くと初老のおじさんが立ってた。

顔をよく見ると右半分が青いあざになってる。


「第二次世界大戦中、日本で原爆を作ろうとしてたの知ってる?」

驚く直子。首を振って答えた。

「当時の陸軍がね、理研に作らせてたんだ。

理研の研究施設も街に作られてね。

その材料のウランがね、この辺で沢山取れたんだ」

反対側のケースの鉱石をいくつか指差したのであざが見えなくなった。

「お嬢ちゃん石河高校の生徒だろう?」

直子は反射的に頷いて、急に気まずい顔になった。

おじさんはその態度に気づいたが、あざの顔を笑顔にして流した。

「兵隊たちの命令で当時の石河高校の生徒が駆り出されて、ウランを掘らされてたんだよ

ウランの危険性なんか皆んな知らなくてね、素手でやらされてんだ」

「えーっひどい」と直子。

「兵隊も解ってなかったんだろうけどね...結局原爆は完成しなかったんだ」

「全然知らなかったよー」

「もし完成してたら歴史はどうなってたんだろうね」

「日本が使ってたら加害者になっちゃう、アメリカの人に呪われちゃうよ」


しばし沈黙が流れた。直子が言った事でおじさんの空気が変わった。

変わった事に気付いたのは私だけだ、直子は珍しそうに鉱石を見て気づいてない、と思った時点でやっと状況が飲み込めた。

これは起きながら見てる夢なんだ。

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