第6話 直子2
髪はベリーショート、細い首に細いチョーカー。ホットパンツにニーソックス。
中性的なファッションがとても似合ってる。
右手に今ねーさんから貰ったジントニック。左手にはどこかのショップの、直子が入ってしまいそうなでっかいビニール袋を二つも持ったままタックルして来た。
「マキー!」
私は狼狽した。今まで見とれていた子に抱きつかれてる。
「マキにここで会えるとは思わなかったよう」
「私も加藤さんに会えて嬉しいよ」
「直子だよ」
「直子に会えて嬉しいよ」
「マキー」
「まじか、園児はお嬢の友達だったのか」とさっきの常連。
「うん、おんなじクラスだよねー」と直子。
「マキ幼稚園児だったの?」とねーさん。
ねーさんにツッコミを入れ様としたら直子に耳打ちされた。
直子は話を変え
「ここでかかる曲マニアックだよね、ずっと来たかったんだ」
さっきの話が気になったけど音楽の話にのってお互いの好きなアーティストの話をした。
私の音楽の趣味はねーさんの受け売りから始まって、興味のあるアーティスト周辺を少しかじった程度。かなり偏ってる。
アーティスト名を言うと、直子は鼻歌で曲を歌い出して「これ?」と言う。
そのアーティストの曲の歌メロだ。
「後は?」
次のアーティスト名を答えると直子はまた鼻歌で答え「あってた?」「うん正解!」
「後は後は?」
少し困って絞り出すと
「えーっ、それ歌ないじゃん」と直子。
でも歌う。機械的で冷たい印象のシンセサイザーのシーケンスフレーズをお茶目な鼻歌にした。
常連に「お前たち百合か?」と茶化された。
そう言えば直子はジントニックとショップの特大袋二つを私の腰に回し、抱きついたままだ。
隣のハイチェアーに座らせたけど、あまり変わらず。
空いた両手で私の右手に抱き着いた。
「ずっとマキと話したかったんだー」
腕に回された直子の両手と、この言葉が、さっきの耳打ちされた一言を思い出させ頭を巡る。
それを感じたかの様にまた直子は音楽に話を戻した。
「Until Deathって曲わかる?」
知ってる曲なので頷いた。
「あの曲ってこうだよね」と歌い出したが、ヴォーカル入りの曲なのに歌メロは歌わず、何故かイントロのリズムマシーンの特殊なパターンを口で歌い出した。
「歌うのそこ!?」と私。
冷たく不気味なリズムパターンはすっかり可愛くなってしまった。しかもイントロ部分は結構長く、歌い続ける直子に私は声を出して笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます