第5話 直子
アイスナインにお客さんが増えてきた。
何人かの常連と挨拶を交わした。
フロアもカウンターも賑やかになって、嬉しくて顔が緩んだ。
それが恥ずかしくなってねーさんを見た。
常連と会話してて気付いてないみたいだった。
フロアを眺めてた。
お洒落な男女、三十人位が踊ってる。
人数に合わせてか、ライティングはさっきまでの倍は派手になってる。
中にはダンスが凄く上手い人が一人二人いる。顔見知りの中の誰かだろうけど顔までは見えない。
あんな風に踊れていいなあ。
あれっ?
小さいからだで激しく踊ってる子が見えた。
中学生?
男の子みたいな短髪だけど、動き方で女の子とわかった。
キラキラしてる。暫く目が離せなかった。
フロアで踊ってる常連達もそう思ったのか
一人が女の子に話しかけて皆が輪になって女の子の反応見てる。
なんて話してるか全く聞こえないんだけど、女の子の答えで皆が爆笑した。
女の子より遥かに背が高い常連達は彼女と手を繋いで盛り上がってる。
まるで娘と親と親戚達みたいだった。
DJが定番の盛り上がる曲をかけた。
そのBPMに合わせて掛け声を上げてる、こんなことは初めてだ。
やっぱり!
飛び交うレーザーの加減で女の子の顔が良く見えた。
「加藤直子」
私のクラスメートの加藤さんだ。
確信した後も
何度も「別人じゃないか」と思って
確信しては疑って…を繰り返した。
だって学校で見る加藤さんと、今日の彼女は全く違う。
学校での彼女は、いつもは…
DJのフィニッシュ。
段々盛り上げてフロアの皆が疲れた頃にクールダウン。
音楽が体を高揚させて行くコントロールのテクニックは毎度感心させられる。DJはオーナーのシュウさんか、ドッジさんか。
ぞろぞろと皆がフロアからカウンターに移動、アルコールと水分補給。
常連にまた声をかけられ、返事をしながら直子を目で追った。
常連の一人の男性が直子に話しかけながらカウンターに近づいてる。
「園児、なに飲む?おごってやるよ」
直子を連れた常連は私のすぐ横で、ねーさんにビール注文して直子を紹介した。
「ヨウコ、この子幼稚園児なんだって」
「あらあら、迷子になったの?ママとはぐれちゃった?」とねーさん。
何を飲むか聞かれ直子は「ジントニック!」と答えた、ニコニコして元気だ。
直子と私は50cmも離れてなくて、直子は私に気づいてない。
この距離で直子を見つつ、自分の感情を不思議に思う。
ここで学校の誰かに会ってしまうのを凄く警戒してたのに、さっきからいつ直子に声を掛けようかとタイミングを見計らってた。
でも、いざ隣に来ると勇気が出ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます