第5話 終焉こそが…

僕たちの目の前の突き当たりから一人の男が現れる。おそらく、さっきの声の主であろう。

もしあの言葉が本当なら、この世界はこの男によって支配されているのか?

ここで一つの疑問が生まれた。


((この世界は、生きている人の世界とは違う世界なのか?))


「分からない」


正直そう返ってくるのは分かっていたがやはりがっかりしてしまう。


『僕、鏡盧紀。君たちにこれをあげる』


男は僕たちの会話(?あちらにとっては独り言のようだったかもしれないが)を遮って僕たちに何かを渡した。


「銃」


それはどこからどうみても銃だ。これを僕たちに渡した理由はさっぱり分からない。


「簡単だとつまらない。すぐ殺せちゃうから。だからこれ使って」


今殺すって言った。言ったよこいつ。

と、その時、周りの亡霊が全員止まった。それが誰の仕業であるかは容易に想像がつく。が、当然確定とまではいかない。


「いくよ」


突然の始まりの合図。が、僕たちには何が始まるのか見当もつかない。さっきからもう少し情報量を増やしてもらえないかと思う。


「ファーストバースト」

その言葉とともに僕たちに2本の銃が向けられた。そしてその直後にはそこから2つの弾が発された。無論、僕たちの方へ……。

だが、当たることはなかった。まるでわざと直前で止めたかのように。寸止めが一番怖い。まあ当たらなかったから良かった。

男は頭を抱えている。頭痛?あいつも亡霊、つまり元人間なのか?


「終焉こそが、この世界の到達点……。」


そう言い残すと男は跡形もなく消えた。とともに周りの亡霊達は動き出す。

何が起こったのか僕には整理がつかない。それ以上に心がおかしくなってしまったのは姉の方らしい。全然気づかなかった僕が鈍感なのか。それとも姉が静かだったのか。それは分からないが、とにかく姉の目は殺意で満ちている。僕は安否を問うが、返答はなく、代わりに独り言が発された。


「あいつ、あいつ絶対ゆるさねぇー!」


姉は今なお残る"彼"の異様なオーラに向けて執念の言葉を叫ぶと、空を見上げて大粒の涙をこぼし始めた。






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