第4話 始まり

 僕たちは、弟を探すという希望のない使命を胸に、歩いている。身内なんだからこのあたりだろうと自宅の近所を回るが、何か特別なことが起こるはずもない。

 

 「ちょっと思ったんだけど、僕たちから見えてる人は、みんな死んでるの?」

 

 もし違かったら人数が多すぎる。だから僕は「うん」という返答を求めて問うた。


 「たぶんね」


 できれば確定してほしかったがまあいい。

 その後も普通に歩いていると、奇妙な光景が目についた。

 近所の表札が全て「鏡」になっている。

 だいぶ珍しい苗字。この苗字の人がこんな固まって何十人もいるはずがない。


 「ねえ、これ絶対おかしいよね」


 「うん、絶対なんかある」


二人とも何かを感じ取っていた。

 そのとき何者かの声が聞こえた。


 「この世界は僕に支配されている!」


その声の主を探す為、本能的に辺りを見回すと、その時には表札の文字は全て変わっていた。

ずっとこの町で暮らしてきたのだから、やはりこっちの方がしっくりくる。

つまりさっきがおかしかったのだ。

さっきの状況が異常だったのだ。

すると、体が急に動かさなくなる。横目で隣を見ると、姉も同じ状況であることは容易にわかった。


(何かおかしい…!)


そう思った時にはもう遅かった。もう"何か"が始まっていた。そして、僕たちの日常はとうに終わっていた。




 

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