第3話 目的
生きているか否かと訊かれたら、正直どう答えていいのか分からない。
しかし、ここに存在している以上、目的をもって生活すべきであると僕は思う。
今、僕の目の前を疾走している彼女は、きっと目的があってこのような行動をとっているのだろう。きっと……。
「どうする?」
「は?」
まさかまさかの無意味な徒競走を終えた僕らは、ようやく本来の目的を探し始める。なぜ走ったのか。それはもはや訊いても無駄だと思った。
僕は、無意味なことはしない主義だ。
とはいえ、ある程度やることは決まっている様子。
姉は自分がある企画の指導者であるかのように、僕に指示を出してきた。
「弟の亡霊を探して!」
言い方からして、姉の、そして僕の弟はすでに死んでいるのだろう。それは察した。納得はいってないけど。
「あなたは弟のことを知っているんですか?」
あまりに堅苦しい兄弟の会話。謎。
「かたいなー。まああたしが年上だからいっか。な、弟よ」
癇に障るので、これからは〝姉ちゃん〟と呼んでやることにした。
って、そんなことより質問に答えてほしいんだが……。
「弟は、生まれてすぐ、肺がちゃんと機能しなくて死んじゃったらしいの。それしか知らない。だから、探さなきゃならないの!」
予想より圧倒的に少ない情報量に困惑。
よくそれで探す気になったな、と感心してしまう。
でも、ここからが意外と真面目だった。
「生まれてすぐ死んだということは、何も知らない状態で亡霊になったってことだよね。恐いよー」
考えてみたらそうだ。弟は今どうしてるんだろう、と素直に気になる。
(だから姉ちゃんは急いでるんだ)
意外と優しい姉ちゃんの一面が分かった。
でも、ふと、心の声が聞こえるという〝悪魔のシステム〟を思い出し、姉を優しいなどとは絶対に思わないように脳を制御した。そしてその代わりに僕は黙って想像した。無知の孤独を……。
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