第2話 人類の死後

 家の中。今いるのはおそらく僕と母だけ。

それなのに、母以外の女性の声が聞こえ、逆に目覚める前まで聞こえていた母の作業音は皆無だ。

 (夢だ。夢。夢。夢)

 これが現実だと思うより、夢だと思う方が楽で、その方が現実的であるのは確か。でも、実際のところ、非現実的な方が現実なのであって……。

 「あたしは翔太のお姉ちゃん」

 ――?

分からない。分からない。ワカラナイ。ワカラナイ。

 どうしているはずの弟がいなくて、いないはずの姉がここに?

 「翔太があたしを知らないのは分かってる。だってあたしがそうしたんだから」

 何故僕は自分の家族構成を人から教わらなきゃならないんだ。

 「今から話すことはとても大事だから、ちゃんと聞いて!」

 よく分からないが覚悟を決める。

 「人間は、死によってレベルアップする。これが、人間の死後の真相。どこまで続くのかは分からない。終わりがあるのかも分からない。でもこれが真実なの」

 普通の人ならすぐに理解できなそうなものだが、まだ半分夢だと思っていることもあってか、僕は何故かワクワクしている。何より気になるのが〝レベルアップ〟という言葉。これを今すぐにでも具体的に教えてほしいところだ。と思っていたらすんなり教えてくれた。

 「具体的には、〝魔法〟のようなものが使える」

 (うぉーーーー!)

 中二病の僕は心の中で大喜び。

 「うるさいっ! 心の声が聞こえるの!」

 「えーまじか。それは困るよー。あっ、だからさっきも!」

 「そう。ちなみにあんたの妄想とかは散々聞いてきたからご安心をー」

 「あ、まじか……」

 こうして死者同士の謎の日常?パートが始まった。そしてすぐ終わった。

 「で、とりま家出るよ!」

 「え、なんで?」

 「それは後で」

 こうして二人は、全く風を切らない全力疾走で、目的地へと急いだ。

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