エンドレスザエンド

変太郎

死んで生きて

第1話 死ぬ

 僕には弟がいる。でも、今は家にいないみたいだ。

 PM4:35。

 「母さん、弟は?」

母親に聞いてみる。母親ならある程度子の行動を把握していると思ったからだ。

 が、返ってきた言葉はあまりにも意外なものだった。

 「なんのこと?どうしちゃったのよ。翔太に弟なんていないでしょ?」

 「……」

僕は何が何だかわからなくて、取り敢えずごまかすと、自室へと戻る。

 PM4:44。

 ――?

 (なんなんだ……。夢か?)

 弟が、僕に弟が存在しないはずがない。そう思って弟の情報を脳から絞り出していくほど、ある違和感が大きくなっていった。

 ――弟の名前、何だっけ?

その違和感に囚われていくうちに、僕の意識は飛んでいた。


 目が覚める。といっても僕はもうすでに立っていた。

 時計を見る限り先程から1分程しか経過していないようだ。

 (体が、軽い)

 「翔太もついにかー」

 まるで、僕の心の声に反応しているかのように、脳に直接メッセージが聞こえてきた。

 女性にしては少し低めで、尚且つどこかなじみのある声。

 「誰?」

僕は思い切って声に出して問う。

 が、その勇気は虚しく、暫し沈黙が続いた後、彼女は言い放つ。

 『翔太は今、死んだんだよ』

 


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