第18話 モヤモヤな気持ち
いつもの通学路、いつもの帰り道。瀬戸はたった一人で歩いていた。
「遊園地の日、雨なんか降るなよ」
石ころを蹴とばしながら、ついそんなことを口走ってしまう。
テンションの高い赤城で忘れてしまうが、なんだかんだいって瀬戸も楽しみにしているのだ。
あゆむとの会話の後から、モヤモヤとした気分がまったくといっていいほど、晴れないのだ。
「はああぁぁー」
大きなため息が辺りに虚しく響く。
委員長と赤城は、瀬戸が詩織と話すと知っているので気を使って先に帰ってしまった。詩織は用事があるから、お先にどうぞとのことでおかげで瀬戸は、一人で帰る羽目になってしまった。
――んー、寂しいな。なんか色んなことで置いてけぼりになってる気がするんだ。委員長と赤城のことだってそうだし。
実際、瀬戸が気づいた時には二人はかなり仲良くなっていた。別に親友を取るんじゃねーよ!! とか言うつもりもないが、あの二人が笑いあっているのを見るとなぜか胸が苦しくなる。
「ただいまー」
いつのまにか家に着いていた。瀬戸は、はぁああ〜とため息をついてからドアに手をかける。
「お帰りなさい。……瀬戸さん」
声が聞こえた。この場に一番いないであろう声。
「し、しおり??」
なんで後ろに?? そんな小さな疑問など簡単に吹き飛ばされそうなほどに、愛らしい笑顔に釘付けになってしまう。
おそらく、はぁああ〜とかため息をつきまくってぼんやりとしてる瀬戸の後ろをついていったのだろう。
――ん、まるでストーカーじゃないか?
そんな今さらなことを思い付くが、口には出さない。考え込んだ瀬戸を見て詩織は何を思ったか、ポカンと口を開けてる瀬戸に向かって話し始めた。
「赤城さんと瀬戸さんのお母様が世間話をされている際に、私のお話をされたそうで」
「はぁ……」
「ぜひ、ご飯でも? とのお話をいただいたので。えっと、赤城さんからLIMEで……瀬戸さんのお母様通じて」
「で?」
かなり低い声が出てしまい、詩織の背筋がピンと伸びる。瀬戸が不機嫌だということを察したのだろう。何を言おうか考えている。
「あ、あの。勝手についてきてしまって、すいませんでした。お家が分からなかったので」
悩んだ詩織の口から出てきたのは謝罪の言葉だった。
「………………はぁ」
「……………っ」
沈黙が続く。詩織は瀬戸を怒らせてしまったのではないかと、思考を巡らせるが何も思い浮かばない。
このまま時が終わってしまうのかと、思ったその時だった。
「いいのよ、詩織ちゃん。さぁ、上がって」
玄関から、ラスボスの声が聞こえる。瀬戸はその声に検討がついたのか、大声で叫ぶ。
「マ……母さんっ! 何を勝手に」
「赤城くんにね、明美が詩織ちゃんっていう可愛い女の子と友達になったって聞いたから。ご飯食べない? って赤城くんから詩織ちゃんに伝えてもらったのよ」
「……もうどうでもいいや。お父さんは、もちろん反対でしょ。それにボク抜きで話を進めんなよ」
ジト目で母親に詰め寄る瀬戸だが、なぜか詩織のことは責めない。
瀬戸の母は、それを見て嬉しそうに反抗期ってやつね〜! と顔を綻ばせた。
「お父さんは、もちろん賛成に決まっているわよ。文句なんて私が言わせないわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます