第12話 後悔?
「うわああ、ついに言ってしまった」
頭の中に自分が言った言葉がぐるぐると回っている。
頭を抱え、どうしようと策を練る。もう言ってしまったからしょうがないなどという風に考えられれば良いが、そうもいかない瀬戸のプライドがある。
「早く入らないと風邪ひいちゃいますよ」
詩織がドアの向こうから優しく声をかける。瀬戸の姿はここからじゃ見えない。うずくまってでもいるのだろうか。だんだん、心配になってくる。
「……余計なお世話だったでしょうか」
小さい独り言だった。思わず握りしめたこぶしが痛くなるほどに力をこめていた。
詩織が吐いた言葉は、ポツリとこぼれた本音だった。
「詩織は入らないのか?」
「へっ」
返ってきた言葉は予想外なものだった。その言葉を聞き、詩織は顔を赤らめる。
「つまりそれは、一緒に入らないか? ってことですね」
「シャワーを!? いや、流石に。そっちの方が風邪ひきそうだ」
「確かに、そうかもしれませんね。うーん残念です。私はもう一つの方へ入るので平気ですよ」
「わかった。入るよ」
衣服に手をかけ、泥で汚れてしまった制服をしわにならないように、ハンガーにかけておく。
瀬戸がシャワーを浴びているのを確認しながら泥だらけの制服を愛おしそうに撫で、高揚とした顔をしていた。
「シャワーを浴びる前に、制服をやっておきましょう」
*****
詩織がシャワーを浴びている間、詩織の部屋へと入れさせてもらう。ドライヤーもどうぞお使いくださいとの事で、ありがたく使わせていただく。
「なんか髪がいい匂いするし、こんな可愛い服をボ、ボクが」
鏡に映る自分が自分でないような気がする、そんなフワフワとした気分になっていた。
ピンクのスカートに白いブラウス、スカートにはフリルが付いていてとても可愛く思え、瀬戸は鏡の中の自分を見つめていた。
――でも、なんか悪くないな。詩織には感謝しないと。……あれ?
詩織の部屋に異彩を放つ物を見つけた。物というか棚だ。ガラス張りなので、中身が見えるようになっている。
ストローとかゴミ屑や紙くずが棚の中に入れられていた。しかも棚には鍵がついており、部屋の主人にしか扉を開けることができない。
「えっ、何これ」
ゾワリとしたものが背中を這う。
ふと背後に気配がした。
背後を取られ、思わず構えをとり殺気を浴びさせる。
「私、好きな人のことなら何でも知りたいんです」
瀬戸の殺気を浴びているのにも関わらず、そして先ほどとは、微塵も変わらない花のような笑顔を見せた。
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