エピローグ

「結局は、収まるところに収まったようになったわね」

 ミズキが学園祭で売っていたラムネを飲みながら言った。

「いつから、宮副先輩の投入はずるいな」

 僕は焼きそば食べている。

「それしても、演劇部もよくあんなこと認めてくれたよね」

 僕は感心して言った。

「みんな、久代にはなにかしら持っていたんだよ」

「なるほど」

 やっぱり、人間って怖い。人間不信になりそう。

「でも、私だけの力じゃないよ。みんながいるからどうにかなったんだよ」

「まーね、ミズキの人望だと思う」

「そうじゃないよ。あんたの人望だよ」

「えっ? どういうこと?」

「それはね、黒崎先輩も宮副先輩もあんたがいたから仲良くなれたのよ」

「そういえば、そうだね。ミズキが二人と関係があるって聞いたことないや」

「でしょ?」

「だから、あたしは宮副さんにお願いすることができたの」

「でも、どうやって?」

「寝ている時にスマートフォンを拝借して」

「えっ?」

「嘘よ。どうやったかは、企業秘密」

 二人でブラブラ歩いていたら、黒崎先輩と宮副先輩が手を振って近づいてきた。

「おーい、二人に朗報だよー」

 宮副先輩が言った。

「後夜祭でカラオケ大会があるんだって、ミズキちゃんでれば?」

 僕は吹き出してしまう。

「やめてくださいよ。今、ミズキは休養中なんですから、もし、万が一ここでバレたら大変なことになりますから!」

「いいじゃない、バレた方が出版社的に儲かるんだから」

「出版社の視点はいらないですよ、黒崎先輩!」

「出ようかな?」

「出るな!」

「すごいね、八面六臂の活躍ね」

 黒崎先輩は言った。

「なにが?」

「気にしないでいいわ」

「気になるわ!」

「頑張るねー」

 ミズキも言った。

「でも、もう頑張らなくていいよ」

「そうね、もう平気だから」

 宮副先輩も言った。

「これ、あげる」

 ミズキがラムネをくれた。僕はそれを飲んだ。

「あれから、舞台終わってからすぐに二人が消えちゃったね。打ち上げどうですか? って言われたけど、私たちもいざとなったら気まずくなっちゃって断っちゃったけどね」

「ボクはみんなことを騙してたわけだから、居場所ないよ!」

「お二方には本当に申し訳ないことをしました。すいません」

 ミズキが謝るなんて珍しい光景だと思った。

「いやいや、いいのいいの、ミズキちゃんが悪いわけじゃないから。久代の人間性が悪いわけだから」

「あれ?」と宮副先輩が言った。

「あそこにいるの、みさきちゃんじゃない?」

 みさきさんが僕たちを見つけてこっちに向かって来た。

「今日は、本当にありがとうございました。今日の件で寛之も気持ちを改めるそうです」

 礼儀正しくお辞儀をする。

「私に近づいてきたのは、嘘だったのでしょうか? 寛之と引き離すためだったのでしょうか? そうだったとしても、私は、少しあなたのことがす――」

「やぁ! みなさん! 」

 みさきさんの言葉をかき消す声が僕たちに向けられた。だれもが目を疑った。なにが起こったのかわからない。みんな顔を見合わせた。不思議なことに、少年は指でピストルの形を作っている。

「やぁ、どうも、初めまして」

「だれだ?」

 勇気を振り絞って僕が三人を守るために先頭に立って言う。

「カイト」

 ミズキが言った。

「だれ?」と宮副先輩が言った。

「あたしの弟」

「久しぶりだね、おねぇちゃん」

 カイトと呼ばれた少年の八重歯がキッと光った。

                     さよなら、僕の頭痛たちにつづく

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夢見がちな園 〜続・僕の頭痛のタネたち〜 ウサギノヴィッチ @usagisanpyon

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