盤上の駒

 夢を見た。


 みんな笑ってる。

 楽しそう。

 幸せそう。

 みんな笑ってる。

 なにも不自由なく生きているんだ、みんな。

 でも、僕がいない。

 僕はどこにいるの?

 みんな、空を向いている。

 そうか、僕はいないのか。

 だれも僕がいなくなっても悲しまない。

 僕の代わりなんてきっといるから。

 手を振るみんな、僕も手を振る。

 さようなら。

 その時、僕を抱きしめてくれる人がいた。

 だれ?

 わからない。

 背はあまり大きくない。

 みさきさん?

 どうして?

 なぜ、みさきさんは僕の体を抱きしめられるの?

 それにあなたは……。

 

 そこで目が覚めた。


「なに、人が寝てたベッドで寝てるよのよ、キモい」

「バカ! このベッドは僕のだぞ!」

「なによ、偉そうに」

「お前こそ、偉そうにしやがって」

「そりゃ、そうよあたしのものはあたしのもの。あなたのものもあたしのものの精神で生きているから仕方ないでしょ」

 水色の狸のアニメに出てくるジャイ●ンじゃないか。そしたら、僕はの●太なのか? こんなのは不公平だ。僕には、水色の狸がいない。助けてくれるロボットなんていない!

 まー、そこは現実受け止めてる。大丈夫。知ってた。

「それはそうと、どうなの? 彼女とは会ったんでしょ?」

「会ったよ」

「どうだったの?」

「なんか……」

「なんか?」

「なんか、友達になった」

「へー、よかったじゃない。そのまま付き合っちゃえばよかったのに」

「えー、そりゃできないよ! 可哀想だし」

「可哀想なのは、今もそうなの。あの子は騙されてるんだから!」

「そうなの?」

「そうなの」

「ソースは?」

「それは色々よ、内緒よ」

「なんだよそれ!」

「もう少し話しがまとまってきたらね」

「なんだよ、なに企んでんだよ」

「まだ推測、推測。さてと、ゲームやろうかな」

 僕はミズキと一緒にいる気分じゃなくなって部屋を出た。部屋を出るときにミズキがなにか声をかけてくれたような気がするけど、聞こえなかった。

 結局、僕は変なゲームみたいなことに付き合わされているのか。それとももうゲームの駒になっているのか。気分が悪くなる。反吐が出る。久代という男がそこまで嫌なやつなのかどうかその証拠や証言が僕のところまで集まってこない。そうだ。あの人に頼もうと頭の中で閃いた。最近、暇してそうな探偵さんに。そうすれば、なにかわかるかもしれない。

 それにしても、もう秋だからリビングで寝るにはちょっときつくなってきた。どうしよう。

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