---
祖母は結婚詐欺にあった。その頃私は中学2年生の夏だった。私は、新しいお爺ちゃんとやらに一回だけ会ったことがある。祖母の家のリビングにいたその男を、本気で殺してやろうと思った。なにも怖くなかった。本当に殺せると思った。その瞬間、祖母に殴られた。狂ってる、と思った。
その男は、新しい会社を立ち上げるために金が必要だと言った。祖母は、もう頭が可笑しかった。正直祖父母の家は裕福で、高価なものがたくさんあった。それらを全て売り払って金にした。当然、祖父との思い出の品も全て。空っぽになった私の大好きな祖父母の家に、その男が当然のように座っていたことに、吐き気がした。そしてその男は、間も無く祖母の前から消えた。離婚届だけを残して。祖母は壊れた。家の近くに歩いていた私と同じくらいの歳の中学生に、金をせびった。そして私にも、お金を出せと言った。そんなもの、持ってないよと私は笑った。だったら帰れと言われた。私は、また来るねと行って祖母の家を出た。走って走って、吐くほど泣いたのを覚えている。
その頃、兄はキリスト教にはまった。壊れていく家庭に救いを、神様に求めた。姉は就職に失敗した。父は家の物を壊したりした。母がたまにトイレで吐いている音がした。私の親友が学校のトイレで自殺未遂をした。私の怒りはなぜか、三年前に死んだ祖父に向いた。祖父の墓参りには、一度も行かなかった。でも、祖母が好きだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます