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祖父の死因は、大動脈瘤破裂の突然死だった。祖父の葬儀には、会社の関係者が多く参列していた。私の家は町工場の自営業で、祖父が社長を務めていた。祖父が亡くなってからは、父が社長になった。

私は葬儀で泣かなかった。何が悲しいのかも分からなかった。人の死が、10歳の私には分からなかった。帰ってきたら、死んでたのだから分からなかった。葬儀の時のことはあまりよく覚えていない。でも、火葬場で祖母が祖父に最後のお別れをしていた姿は今でも鮮明に覚えている。その表情は、とても柔らかかった。いつも私を見つめて褒めてくれる時の顔よりもはるかに、優しい顔をしていた。祖父と祖母は、たしかに夫婦だったのだと思った。祖父のことを、"お父さん"と呼ぶ姿を見て私はその日、初めて泣いた。私のおじいちゃんは、おばあちゃんの旦那さんだったんだと、初めて感じた。怒鳴られても、料理を投げられても文句ひとつ言わずに片付けていた祖母の姿が頭に浮かぶ。私はその時、一生祖母を大事にしようと心で誓った。私は母と手を繋いでいた。母の手をぎゅっと握った。すると母は泣きながら私を抱きしめた。


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