亡くす
正直祖父が亡くなった時、どれくらい悲しかったのかとか、どんな気持ちだったのかとか分からない。10歳の頭で考えることなんて単純で、" よくわからない "だった。祖父母の家に行くと、嗅ぎ慣れない匂いがした。行き慣れた祖父母の家ではない様な感覚があった。部屋に入ると。祖父が寝ていた。寝ているだけの様に見えるのに、みんな泣いていた。
「 おじいちゃん、死んじゃったよ 」
初めて祖母を、情けない姿だと思った。そして私は、人の死への恐怖なのか悲しみなのか混乱なのか、よくわからない涙を流した。10歳の私が、必死に理解しようとした結果だった。人の遺体を初めて見た。ただ寝ている様にしか見えないのに、祖父は確実に死んでいた。その時の記憶で何故か今でも鮮明なのが、祖母が時々死んだ祖父の顔を見て微笑む姿だった。今思えば奇妙な光景だったし、何故数時間前に亡くなったばかりなのに笑えるのか、もう既におかしくなってしまっていたのかもしれないなと思う。
でも、私は分からないことがあった。姉と兄が隣で泣いていることだった。私は末っ子で、たったの10年しか祖父の孫であった期間は無い。8歳上の姉と、6歳上の兄の方が悲しいのは当たり前の様に見えるが、当時の私はそうは思わなかった。
" なんでお姉ちゃんとお兄ちゃんがそんなに悲しむの? おじいちゃんに毎日会いにいってたのは私なのに。私が一番、側にいたのに "
という感情だった。
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