氷河期転生〜チートでも自然には勝てない〜

@kojiromomonga

第1話  九州男児、凍土に立つ

気付いたら真っ白な世界にいた。

暑さも寒さも感じない、頭がぼんやりとしている。

今まで何をしていたのかてんで思い出せないが、先ゆく不安も全くない。

何となく自分の左手を覗き込む。手持ち無沙汰に動かすが、いまになって自分が裸だと知った。そして、この白さの正体が、眩い光だった事を知る。


「目覚めたか」

ふと誰かが呟いた。


何か言い返してやりたかったが、言葉が出ない。

咄嗟のことで反応できないのか、あるいは存外、自分は内向的な性格なのかもしれない。


「借りを返してもらおう」

先ほどの声がまたする。凛とした女の声だ。

何となくだが、声の主人は光源そのもののような気がした。


「戦に絶望した貴様に、人の世の平和というものを見せてやった」

なるほど、漠然とだが、そのような事をしてもらった気がする。


「降り立った地より前へ、ひたすらに進め」

女がそう言うやいなや、眩い光がさらに光量を増していった。


※※※


眩さが去ったと思いきや、自分は裸で雪原に放り出されていた。

あまりの寒さに、痛さに悶絶してしまう。


吸う息すらが、今までに感じたことのない寒さだ。

行き場のない雑多な感情を込めて叫ぶ。


「さ、寒かぁぁぁぁああああああああああああ‼︎」

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