第3話

”アオカラス”と”アカネコ”は、仄暗い地下街の裏路地を通り、”渡り鳥の間”へとやってきた。

「これはこれは、”アオカラス”先生!遠出ですか?」

迎え入れたのは、若い魔術師だ。


「今回も世話になるよ。”シロモグラ”君。”ハイユリカモメ”は元気かね?」

「はい!相変わらず師匠は元気で、あっちこっち飛び回ってますよ」

「ハハハ、それは結構。いずれはキミがトリになる。今のうちによく学ぶといい」

”アオカラス”は”シロモグラ”を労うと、目的地を書いたメモを渡した。


「ここなら丁度、近い出口がありますよ。いつもどおり、片道でかまわないですよね?」

「ああ。帰りはゆっくり観光でも楽しみながら戻ってこようと思っていてね」

「”アカネコ”さんも、ごゆっくり」


「ふん!私はもっと稼ぐために、とっとと帰ってきますよ」

”シロモグラ”に言葉をかけられた”アカネコ”は、やや不機嫌だ。一方の”アオカラス”は、余裕がある。

「なあに、そこまで焦ることはない。今回の仕事がうまく行けば報酬は多い。社会見学も重要な修行だ」


「とにかく、とっとと行って仕事を片付けますよ!」

”アカネコ”はズカズカと歩き、部屋の中央に描かれた魔法陣の上に立つ。”アオカラス”も後に続く。


「それじゃあ、行きますよ。”渡り鳥はヤドリギを忘れず”、”迷える彼らを導くだろう”。”道筋は鳥が定め”、”韋駄天は道に従う”……」

”シロモグラ”の呪文に反応するように、魔法陣の周囲に立てられた無数の小さな柱がカタカタと震える。


「……”遠く走り、届けよ”」

最後の呪文とともに、”アオカラス”と”アカネコ”は、魔法陣の上から姿を消した。


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……東京地下の魔法街から遥か離れた森の中。恐ろしく静かなその場所に、”アオカラス”と”アカネコ”が投げ出される。

「ぎゃっ!」

”アカネコ”が盛大にコケる。

「いい加減に着地くらいなれたらどうだ?」

”アオカラス”が優雅に着地する。


「現場までは少し歩く。ぼやぼやしていると置いていくぞ」

”アオカラス”穏やかに、だが素早く歩き出す。

「待ってくださいよ!こら!待て!」

”アカネコ”は立ち上がって服のゴミを払うと、”アオカラス”を走って追いかけた。

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