第2話
”アオカラス”が取り出したその本は、奇妙な皮のハードカバーで、大きなファイルのようにも見える。開くと、何かの声のような音とともに、ひとりでにページがめくられる。
「今回の仕事は回収だ。ただ、どうやらムシが湧いているらしい」
「うえ……虫が湧いてるって、そんなのもう価値ないんじゃないですか?」
「はぁ……」
”アカネコ”の的はずれな質問に、”アオカラス”はさぞがっかりしたといった感じで、大仰にため息をつく。
「なんですか!?」
「虫ではなく、ムシだ。未登録の魔術師の総称だ。まったく、それくらい常識だろうに」
「そんなこと言っても、私まだ魔術師になったばっかりだし……」
「フッ。だから、そんな安物を買わされるわけか」
「安物って……どれのことですか!?」
”アカネコ”は自分の服や持ち物を手当り次第触って動揺する。
「そのうち嫌でもわかる。失敗から学ぶことだな」
「”アオカラス”はいっつもそれだ……」
”アカネコ”は少々不機嫌に”アオカラス”を睨む。
「そんなことより、今は仕事のほうだ。ムシが湧いたというのが事実ならば、急がねばならない。先に回収される前に、我々が正式に回収し、そして報酬を得る」
”アオカラス”の開く本には、1軒の廃墟が映し出される。立入禁止のテープが貼られ、警察が警備をしている様子が見える。
「フフッ、どうだ。なかなかの現場だろう?久しぶりのまっとうな手続きの仕事だ。どんなムシが湧いたか、興味深いだろう?」
「……いえ、別に」
期待する”アオカラス”に対して、”アカネコ”はどうでもいいといった感じだ。
「私は、報酬が貰えれば、それでいいんですよ」
「今はそう言っているが、いずれこの楽しみが分かるようになる」
”アオカラス”は本を閉じ、振り返って歩き出す。
「行くぞ」
「はい」
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