第14話文化祭


「ダンス部スタンバイオッケーです!」

無線で準備完了の早川さんの声が聞こえた。

毎年文化祭は体育館で開会式が行われる。

その進行役が僕たちの役割だ。


開会式が始まり、ダンス部のアクロバティックな動きなどにより会場が盛り上がり、次に吹奏楽部の演奏により、会場の盛り上がりは、マックスになった。


そして、文化祭実行委員の代表のメガネの男が、今年の文化祭のスローガンが発表された。「今年の文化祭のスローガンは野郎ども祭をサイコーに盛り上げようです!」

ダンス部や吹奏楽部のおかげでスローガンのダサさが消えて、体育館の盛り上がりは上がったままだった。


その後校長先生のお話や、先生の文化祭お決まりの注意点などの話をして、開会式が終わった。


早川さんが僕とこに来て、

「開会式無事を終わったね!次はクラスの出し物を頑張ろう!!」

「うん、頑張ろう」

二人でクラスに戻った。


僕たちの劇は教室を使って劇をする。

僕たちの劇には特徴があり、美女と野獣をどっちも男子がやるというウケを狙いつつも、ストーリー通りにやる劇だ。

音楽などはラジカセを使ってやる。

なぜ携帯でやらないのかというと、学校側から文化祭も授業の一環だと行っていて携帯を使うのは禁止になっている。

まぁでもどうせ、パリピな奴らは隠れて携帯を使って写真を撮ったりしてるだろうけど…


僕の劇での役割は野獣を襲うチンピラの一人だ。いつもなら、特にいなくても大丈夫な役割なので、サボってしまうのだが今年は文化祭実行委員にもなったし(自分の意思ではないが…)最後ぐらいやり通したいなと思ったからサボらなかった。

僕らの劇のスケジュールは午前に3回、間に休憩を挟み午後は他のクラスに の出し物を各自遊ぶというものだった。



1回目の劇は、お客さんも満足している様子で見ていてくれて、なかなかの出来で終わった。

2回目も一回目と同様にいい出来で終わったとおもう。



問題が起きたのは2回目と3回目の間の休憩の最中だった。

クラスの男子が机の上のラジカセを落として壊してしまったのだ。そのせいで音が出なくなりクラスのみんな不安な気持ちになってしまった。


そしてこのまま行くの落とした男子の子が責められてしまうだろう。

それを察したのか、早川さんが、「最後だし、音なしでの劇でもいいんじゃないかな?」

だが流石の早川さんでもこの雰囲気のクラスのみんなをまとめることは出来ず、ラジカセを落とした男子は責められていた。


早川さんは本気でどうにかしたい顔をしていた。

僕はただ助けたいと思った。

だからクラスに1つ提案をした。

いつもならしないはずなのに何故だろう…



「僕が劇の伴奏をするよ。」

クラスのみんなは「何言ってんだ?」とか

「急にどうした?」とか様々な声を上げていた。


「僕は美女と野獣のサンドラとか昔から聞いてたし、最近ピアノを弾いているから弾けると思う。キーボードなら音楽室から借りてくればいいし、みんながよければ僕が伴奏する。」


「本当にやってくれるの!」

早川さんが嬉しそうに言った。

「うん、早川さんやクラスのみんなが必死に頑張ってたの知ってるから、僕も手伝いたい。」

早川さんは嬉しそうに「ありがとう」と言い走って音楽室に言った。


僕はその間、スマホで音を確認しようとしていたら、クラス委員の男に「あんまチョーし乗んなよ、それと失敗したらただじゃおかないからな」と強気で言われた。

僕はそれに反論しなかった。

今までの僕なら確かにこんな行動取らなかったからだ。

ほんと僕は2人の女の子に変えられたのだと思った。



そして3回目の劇が始まった。


僕は劇に合わして音を変えわからないとかは、僕なりの表現で盛り上げ劇が盛り上がるように全力で音を鳴らした。

早川さんが必死に頑張ったこのクラスの出し物を台無しにしないよう頑張った。


そして、3回目の劇のお客さんの反応は今日一番良いものだった。


劇が終わった後、クラスの一部の人たちを除き(先ほどいちゃもんつけてきた奴は来なかった)感謝の言葉を贈られた。


僕は初めて文化祭という物をどいう物か知ることができた気がした。



そしてクラスの出し物が終わり後は他のクラスなどを回るだけになった。


まぁ僕には回る相手などいないので、いつもの僕のお気に入りの場所に行こうかなと思った。

こんな時に水野さんがいたら一緒に回ってたのかなと思う。

その時聞き覚えのある声が聞こえた。

とても懐かしくとても会いたいと思っていた人の声だった。

その方向に全力で走った。

目の前にみよ映えのある髪の色をした髪型を見た。


僕はすぐにその子のとこに行くとやはり、僕が思った通りの人だった。


「さっきの伴奏はなかなか良いものだったぞ

リア充君!」

懐かしい顔だった。

「僕がリア充なら、今一人で歩いてないだろ」

思わず涙が出そうになった。

とても会いたかった人だ。

「おかえり、水野さん」

「うん!ただいまー!」

なんかこんなことを言うのはおかしい気がしたが彼が一番しっくりきたから言った。



それから水野さんといろんなところを回った。やっぱり彼女は変わっていなくとても明るく、冗談を言ったりして僕をからかったりしていた。でもそんな時間が僕はとても懐かしくとても楽しかった。




そしてそろそろ閉会式の前のパフォーマンスなどが体育館であり、その進行なども実行委員の僕の役目だったので、彼女と別れることにした。


「今度会うときはコンクールで!」

「うん、必ず行くからまってて!」





彼女と別れて、体育館に行き、早川さんが一足先にいたので僕もそこに行った。


そこで実行委員みんなの深刻な顔を見て何かあったのかと僕は思った。


「早川さん、何かあったの?」

「ごめんなさい、私のせいでパフォーマンスのスケジュールに穴があって、最後のパフォーマンスまでの15分近く何もなくなってるのに今気付いてどうしようって…」


これはとてもまずい事態になってると僕も思った。

最後のパフォーマンスは着ぐるみなどを着て可愛いパフォーマンスしてる間に体育館の二階にクラッカーでサプライズで派手に盛り上げて終わる流れなので、スケジュールを早くすることができない。

とてもまずい事態だ…。


1つ案が浮かんだ。でもこれは正直うまくいくかわからない。

それでも彼女水野あかりならやるだろう。

だからぼくもやることにした。

そして、いつか早川さんに借りた借りを返すチャンスでもあったからだ。

「早川さん、皆さんぼくが時間を15分間ピアノを使って稼ぎます。ぼくがやります。」


みんなはできるのかよと言う反応だった。

この反応は午前中にも見たような気がして、正直笑ってしまった。

やっぱり僕への信用はないなと思った。《《》》

でもただ一人だけそのような反応をしてない人がいた。

「ありがとう。本当にありがとう翔君!」

彼女は泣きそうになっていた。

「早川さんがこの文化祭を成功させるためにどれほどの頑張ってたかは隣にいたぼくが一番わかってるから。それに掃除を手伝ってくれた時、本当はとても嬉しかった。その借りをここで返すよ。だから安心して見てて。」

「うん。」


アナウンスで僕の演奏になるとメガネの実行委員がアナウンスしてくれた。


舞台に僕は向かった。

今度は早川さんのために、そしてどこかで見てるであろう水野さんに今の僕を見せるために全力で……







《《》》僕はこの日のことを一生忘れなくなるものになるのだった。










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