ある依頼

 そんな話をした数日後、レイカの元に客がやって来た。


「レイカ姉、御無沙汰しています。」


「『タハール』王子、いえ今は王太子でしたか。王太子様こそお元気そうで何よりです。」


 レイカが丁寧語喋るの初めて見たな。まぁ、元々は王女なんだから当たり前か。


「レイカ、知り合いか?」


「あっ、師匠! こちら『タハール・ハシマラ』ハシマラ王国の王太子です。」


「はじめまして、貴方が勇者様のお兄様ですね? レイカ姉から手紙で聞いています。ハシマラ王国のタハールと言います。」


「ダイナだ、よろしくな。ハシマラ王国て確かレイカが婚約破棄した所だよな? 絶縁した訳じゃないのか?」


「昔から付き合いがあるからそう簡単に縁は切れないわよ。元婚約者は遠慮無く切ったけど。」


「本当に元兄がすみません。今は小さな村で農業をやってるみたいで凄く反省してるみたいですよ。レイカ姉の事も耳に入ってるみたいで『俺の愚かな行為で彼女を変えてしまった・・・・・・』て後悔してますよ。」


「今更気づいても遅いのよ。」


「それでも反省してるから屑よりはマシなんじゃないか? 逆恨みして襲う輩もいるらしいからな。」


「そんな奴だったら返り討ちにしてあげるわ。」


 ・・・・・・本当逞しくなったわ。


 多分、両親は泣いてると思うけど。


「ところでその王太子が何の様なんだ?」


「他流試合の相談みたい。」


「恥ずかしい話なんですが慰謝料やらを払って我が国は今財政難に陥っていて他流試合で着用する鎧が作れない状態なんです・・・・・・。」


「元々、ハシマラ王国は貧乏でうちの国が援助していたんだけど、私の件で援助額は半分くらいに減額されてるから。」


「こんな事を頼める義理は無いと思うんですが、只でさえ評判が悪化して更に他流試合で恥をかけば我が国はドン底に転げ堕ちてしまいます。どうか良い知恵を貸して頂きたいんです。」


 そう言ってタハールは頭を下げた。


 と、言っても鎧かぁ・・・・・・。


「モハンだったらツテがあるから何か良いアイディアがあるんじゃないか?」


 俺はタハールを連れてモハン商店に行き事情を話した。


「なるほど・・・・・・、鎧の材質は最近は『エメナル』製が主流なんですけど、今エメナルは高値で取引されているので、手に入れるのは厳しいんですよ。」


「そうですよね・・・・・・、見積もりを作ったら流石に新しい鎧を作れないですよ。」


「ただ・・・・・・。」


 ただ?


「一つだけ、エメナル製の鎧に勝てる金属があります。幻の金属と呼ばれる『エラコンド』で鎧を作れば多分勝てる可能性があります。」

 ・・・・・・ん? エラコンド?


 どっかで聞いた事ある様な・・・・・・。


「あぁっ!!」


「ど、どうかしたんですか。」


「あっ、悪いないきなり大声を出して・・・・・・、そのエラコンドとか言う物質、俺は見た事あるかもしれない。」


 その発言をした直後にモハン商店に大きな絶叫が響き渡った。  


 

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