客は大事にするべき
モハンの店がオープンして一か月が経過した。
基本は村人達が使っていたが徐々にだが冒険者の客が多くなってきた。
「ほとんどが昔の常連さんですよ。どうも、グレスリー商会の評判が悪くなってきているそうなんです。」
「評判が悪い、て?」
「『質が落ちた』、『値段が高くなった』、『店に入りづらくなった』とかですね。
「それ、致命的じゃないか? 店にも悪い影響とか出てくるだろ?」
「ですよね……。それに危機感を感じてくれればいいんですが……。」
追い出された身だからどうしようもできないんだろう。
そんな中、商店にある人物がやって来た。
「お久しぶりです、若。」
「『ゲイツ』さんじゃないか!? どうしたんですか?」
この人物、どうやらグレスリー商会の関係者らしい。
「知り合いか?」
「えぇ、父の代から商会に勤めている鍛冶職人の『ゲイツ・ワグナー』さんです。」
「と言っても既に引退して隠居している身ですが……、若が商会を追い出された、と聞いて心配で様子を見に来たんです。しかし、どうやら心配は無さそうですな。」
「見ての通りです。マイペースにやってますよ。」
「全く、商会は若を追い出すなんて何を考えているのか……、おかげで今商会は大変な事になっているんです。」
「大変な事って?」
「売り上げが急激に落ちているんです。冒険者向けの武器や防具を止めた途端に他の店に冒険者が行き一気に売り上げが挙がっているそうなんです。」
「確か貴族や王族とかの高級路線に変えたんだよな。それが失敗した、という事か?」
「冒険者が客の大半でしたからね、売り上げが落ちるのは当然ですよ。」
「それでも、どうやら楽観視しているみたいでして……。今度、他国との他流試合を行うそうでその鎧作りに気合が入っているそうなんですが……、これを見てくだされ。」
そう言ってゲイツさんが見せてくれたのは鎧のデザインだった。
装飾が多くて、無駄な物が多い。
「誰がデザインしたんだ?」
「これは……、兄さんだ。」
「モハンの兄って、追い出した張本人か?」
「えぇ、このデザインの悪さは兄さんですよ。」
「うちの職人達も苦笑いですじゃ。」
「因みに耐久性のテストはしたんですか?」
「それが……、『そんな物は必要ない。うちの店が作ったんだから安全に決まっている。』と。」
「兄さんは過信しているからなぁ……。」
そう言ってモハンはため息をついた。
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