土魔法が敬遠される理由

「土魔法って、例えば家の修復とかも出来るのか?」

「出来ますよ。」

「出来るんだったら是非修復してもらいたい建物があるんだ。やってくれないか?」

「僕の力で出来るんでしたら喜んでやらせてもらいますよ。」

 俺はランシュを連れて教会にやって来た。

「この建物なんだけど……、出来るか?」

 ランシュは教会を見てニッコリ笑いながら言った。

「出来ますよ。」

 ランシュはすぐに行動を開始した。

 地面に手を当て呪文を唱えた。

「この地に住む聖霊よ、我が言葉に答え、この地に立つものに恩恵を与えたまえ。」

 そう言うと、大地がむくむくとうねりを挙げた。

「な、何が起こるんだ。」

 俺は緊張した面持ちで見ていたが

 ボコボコボコボコボコボコボコッ!!

「レ、レンガが生まれたっ!?」

 一気に大量のレンガがその場に生まれた。

 ランシュは更に穴が開いた土壁に手を当て

「この建物に宿る命よ、再び在りし日の姿を現したまえ。」

 そう言うと土壁が生き物のように拡がり壁を修復していった。

「すげぇ……。」

「土魔法って、こんな事が出来るの?」

 一緒に見ていたレイカも唖然としながら見ている。

 出来上がったレンガはボロボロになっているレンガと取り換えた。

 これもサイズがピッタリだった。

「すごいなっ! ランシュお前凄いよっ!」

「ホントっ!貴方天才よっ!」

「えっ、あ、ありがとうございます。でも、これは土魔法の基本なんですよ。」

「おや、土魔法ですか。」

「あっ、カシュア。」

「魔力を感じたので見に来たんですが……、これはまた見事ですね。」

「土魔法って凄いのね。なんで人気が無いのかしら?」

「若い魔導士は派手な物を好むんですよ。『光』とか『闇』とか。」

 そういえば、ケエルも『闇』魔法を使っていたな。」

「しかし、土魔法の使い方は無限大なんですよ。最初はレンガ作りから始まりますが、レンガを作れば建物を建てる事も防壁を建てる事も出来ます。高名な土魔導士は『要塞』を作り上げた、と聞きます。」

 よ、要塞……。

「それ、僕のお爺ちゃんなんです。お爺ちゃんは様々な魔術が出来るんですがその中でも土魔法の腕が凄かったんです。でも、あまり有名じゃないんですよ。周りが隠そうとしているみたいで……。」

「魔導士界の中では土魔法の凄さを理解していない輩が多いんですよ。」

 なるほどな……。

「だったら、力を示してやればいいじゃない! この村を土魔法を使って発展していけば無視していた奴らも評価せざるおえない事になるわ。」

「あぁ、それ俺も思った。見ての通りボロボロの建物もあるし、これから大きな建物も必要になってくるんだ。ランシュの力が必要になってくる。協力してくれるか?」

「僕でよかったら……。」

 こうして、ランシュがこの村で暮らす事になった。

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