商人、来る
「お兄ちゃん、買い物行って来たよ。」
「ありがとな、ミファ。」
この村には店が無い。
武器屋、防具屋、道具屋、食堂・・・・・・。
必要な物があったら一々街まで行くしかないか、たまに来る行商人に頼むしかない。
まぁ、その行商人もこんな寂れた村になかなか来るものでもない。
ギルドも出来る訳だし、そろそろ店が必要なんだけどなぁ・・・・・・。
そんな時に村に訪問者がやって来た。
眼鏡をかけたいかにも頭が良さそうな感じの男性だ。
その人物に声をかけられ俺はディオの元に案内した。
「この村の村長のディオです。」
「私、王都の方で『グレスリー商会』というのを営んでいる『モハン・グレスリー』と言います。」
「えっ!? グレスリー商会て言ったらあの大手のっ!?」
俺も聞いた事がある。グレスリー商会というのは王都でも結構評判の高い店だ。
「経営してるのは兄でして、一応私も支店の方を営んでいます。それで、話がありましてこの村に店を出したい、と思っております。」
「グレスリー商会の支部を作る、という事ですか?」
「いえ、そう言う事じゃありません。うちのお店の客層をご存じでしょうか?」
「王族から冒険者まで、って聞いてるけど。」
「王族は合ってますが問題は冒険者の方です。冒険者と言っても金のある冒険者です。冒険者の殆どがお金がなかなか稼げない者です。」
言われてみれば俺もグレスリー商会に行った事は無い。
理由は簡単で、『高いから』だ。
「私としては、稼げない冒険者にも良い物を提供するべきだ、と考えています。ですが兄は基本的に上流思考が強い方で、『金の無い奴は客じゃない。』、『冒険者もギリギリで許可してるんだ。』と考えてまして、いつも喧嘩になるんです。」
ため息をつきながらモハンは言う。
「俺も何回か行った事あるけど、歓迎されてないな、って感じた事はあるよ。そう言う考えの事だったのか。何か腹立つ話だな。」
「それで、遂に私は兄と大喧嘩をして商会から追い出されました。それで良い機会だと思いまして私の理想の店をやりたい、と此所にやって来たんです。」
「でも、何故この村なんだ?」
「この村にギルドが出来るのは知っています。チャンスだと思いました。大金は稼げなくても良いんです。私は冒険者や庶民の役に立ちたいんです。」
「気に入った! 俺も協力するから何でもやってくれ!」
ディオは信念というか、こういう熱い思いを持ってる奴に弱いんだよなぁ・・・・・・。
こうしてモハンはこの村で店をやる事になった。
営むのは武器、防具、道具を全て扱う総合商会だと言う。
店の名前は『モハン商店』となった。
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