第6話

昨日もそうだったが、今日もニュースでは首が「はなれて」と言っている。


そりゃそうだわ。私は切ったわけではないので、「はなれて」としか言いようがないだろう。


私にはそれがおかしかった。


つい笑っていると、後ろから声が聞こえた。


「プリンセス、何を笑っているの?」


お母さんだ。


振り返るとお母さんが怪訝そうな顔で私を見ていた。


そうかもしれない。


ひどいニュースを見て笑っている娘を、変に思ったのだろう。


「なんでもないよ。ちょっとさっちゃんのことを思い出しただけだから」


「そうなの。それならいいけど」


そう言うとお母さんは奥に引っ込んだ。


あぶないあぶない。


お母さんがそばにいるときは気をつけないとね。


私はまだ六歳だから、お母さんにはしばらくがんばってもらわないと。


でも私が大きくなったら、もうお母さんがいらなくなったら、お母さんの首を喜んで落としちゃうけどね。


お父さんもおじいちゃんもおばあちゃんも猛反対したのに、なにからなにまで日本人の私にプリンセス(しかもカタカナだよ)なんて名前をつけるお母さんの首なんて、腐った脳みそしか入っていないんだから。


そんなの落としちゃってもいいのよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る